【2024衆院選 経済政策】消費活発化の議論を(10月23日)
27日投開票の衆院選で、経済政策が政治改革と並ぶ大きな争点に浮上している。「デフレからの脱却を目指すには、個人消費を活発化させる必要性がある」との公約や党首の発言が目に付く。ただ、具体的な対策が各党から提示されているとは言い難い。国民の金融資産を消費に振り向ける方策を十分論議すべきではないか。 賃上げで増えた所得を消費に回せば企業の収益が拡大し、さらなる賃上げにつながる好循環が実現する。国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の動向は、この国の経済の浮沈を握っているとも言えるだろう。 「たんす預金」を含め、流動性に乏しいとされる高年齢層の金融資産に注目したい。内閣府が公表した今年度の年次経済財政報告(経済財政白書)は、自らの預貯金や有価証券などの財産を取り崩さない傾向が高齢者に強いと指摘した。60―64歳世帯の金融資産平均保有額は約1900万円、80歳以上は約1600万円との総務省の全国家計構造調査の結果も出ている。白書には、長寿化により生活資金の確保に不安を抱え、支出が抑制されているとの見立てが盛り込まれた。
半面、「財産を使い切りたい」との思いも少なくないとした。金融広報中央委員会の昨年の調査で、「財産を使い切りたい」との高齢者の回答は34%に上り最多だったと紹介している。 地域の特産を返礼品にした「ふるさと納税」の寄付額は昨年度、全国で初めて1兆円を超えた。県産品をそろえた県観光物産館(福島市)の昨年度の売り上げは過去最高の10億円を記録した。個性的な商品・サービスは消費を喚起する。お年寄りが子や孫、旧友のため贈答品を購入する動きにもつながる。衆院選では、地方創生の観点からも地場産品の需要を一層伸ばす提言に期待したい。 今回の論戦では、経済政策と物価高対策が同義になっている印象が強い。光熱費高騰をはじめ、日用品の相次ぐ値上がりが国民生活を圧迫している厳しい実態を早期に解消するのは急務だ。一方で、幅広い視点に立ち、国力を引き上げる未来の成長戦略を打ち出すことこそ、真の「経済政策」だとの認識も忘れてはならない。(菅野龍太)