【認知症発覚後の資産管理】70代の両親の「物忘れ」がひどくなってきました。「任意後見制度」の利用を勧められたのですが、どんな制度ですか?
親が認知症を発症してしまうと、銀行の口座が凍結されてしまう可能性があります。凍結されてしまうと、家族であっても預金が引き出せないため、生活費や介護費用などを代わりに持ち出さなければならなくなってしまうケースもあり、負担が大きくなってしまいます。 今回は、両親の物忘れがひどくなってきたときに考えていただきたい「任意後見制度」について解説します。
認知症が発覚すると預金口座が凍結される?
認知症と診断されると、原則として、本人による金融機関での口座取引が制限されることがあります。この状態を、財産が事実上凍結されることから「口座凍結」と呼びます。 口座凍結は、認知症になった方の財産を守るために行われる措置です。認知症によって判断能力が低下したままで取り引きを行うと、詐欺などの被害にあったり、十分に理解をしないまま金融取引をしてしまったりといったリスクがあります。 ただ、口座が凍結されてしまうと、本人の生活費や介護費用が引き出せなくなるため、代わりに親族などの身近な方が費用負担しなければならず、大きな負担となってしまう可能性があります。このような事態を防ぐための手段の一つが「任意後見制度」なのです。
任意後見制度とは?
任意後見制度とは、認知症などにより将来的に判断能力が低下することを見据えて、本人の判断能力があるうちに「任意後見人」と、任意後見人に「代わりにしてもらいたいこと」を契約で決めておく制度です。 任意後見人は本人のサポート役として、財産の管理や身上監護を代理で行います。これにより、本人が認知症などで判断能力が低下してしまった場合にも、詐欺などの被害から財産を守ることが可能です。 また、介護施設などへの入居についても、任意後見人が代理で手続きをすることで、円滑に進められるでしょう。
任意後見制度の手続きの流れ
任意後見制度の手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。 1. 公正証書による任意後見契約の締結(本人の判断能力が低下する前) 2. 任意後見監督人選任の申し立て(本人の判断能力が低下した後) 以下からそれぞれの内容について解説します。 1.公正証書による任意後見契約の締結 本人の判断能力が低下する前に、将来的に任意後見人になってもらいたい人と、任意後見契約を締結します。任意後見契約は、法律により公正証書で作成することが定められているため、公証役場に契約の案文を持ち込み、公正証書の作成を依頼します。 なお、公正証書の作成にかかる主な費用は、表1のとおりです。 表1