【地方競馬】本番を意識した前哨戦での騎乗、想定通りに運んだ川崎記念制覇
新ダート体系の象徴の1つである、古馬中距離路線の整備に伴う川崎記念JpnIの時期移設。初のナイター開催となった川崎記念JpnIは、地元のライトウォーリアが手に汗握る接戦を制し、2024年最初の地方馬JpnI制覇を飾った。 【写真】ライトウォーリアのこれまでの軌跡 川崎コースは各コーナーがきついため、コーナーにかかるハロンラップとストレート部分のラップがアンバランスになる傾向がある。川崎記念JpnIのレースラップを見ると、最初の100mを別として3F目(500~700m)が13秒7、同6F目(1100~1300m)が13秒6で、その前後のラップとは約1秒の差が生じている。 後日、吉原寛人騎手にレースラップを見てもらいながら話を伺うと、「川崎2100mは逃げ馬にとって、あまりスローに落とすと、1周目のスタンド前で捲られる恐れがありますので、直線部分は意識してペースを上げ、コーナーで息を入れることを心掛けました。後でレースラップを見た時、まさにその感覚と合致したので、自分の想定通りのレース運びができたことが、結果として勝利に結びついたかもしれません。それでも、最後は一杯一杯でしたけど(笑)」と話していた。 このシミュレーションができたのは、報知オールスターカップに騎乗したことが大きいと話す。 「ミューチャリーがJBCクラシックを勝った時もそうでした。その年は金沢でJBC開催が行われることもあり、本番も継続して乗って欲しいという陣営の意向で、白山大賞典から騎乗依頼を頂きました。本番を意識する上で、道中の運びからわかる気性面の課題や、使える末脚などを前哨戦で把握したいと思えば、ある意味で思い切ったレースができます。ミューチャリーの時は、小回りのレース経験が少なかったこともあり、白山大賞典でコーナーから加速していくことを試み、それをJBCクラシックで実践できたと思います」(吉原騎手) ミューチャリーでの経験は、脚質の違うライトウォーリアでも活かすことができたと言う。 「やはり、川崎記念に乗せて頂けることが確約されていたことは嬉しくもあり、何とかライトウォーリアの良さを引き出したいという思いを強く抱かせてくれました。JRA勢が相手、しかもJpnIだという厳しさを考えれば、報知オールスターカップはただ勝つことを目的としたレースではなく、速い流れを生み出しながら押し切ることを意識します。報知オールスターカップの時は引っ掛かる面を見せていましたが、その時の経験が川崎記念で返し馬から細心の注意を払い、道中の折り合いにつながったと思います」(吉原騎手) 継続性の重要さという点では、京浜盃JpnIIを制したサントノーレにも言えるだろう。北海道・田中淳司厩舎から大井・荒山勝徳厩舎に移籍したサントノーレは、デビュー前から調教をつけてきた服部茂史騎手が、雲取賞JpnIIIと京浜盃JpnIIにも騎乗し、ダートグレード制覇に導いた。残念ながら、レース後に剥離骨折が判明し、春の二冠は断念することとなったが、JRA勢の牙城を破った京浜盃JpnIIの内容から復帰を見守りたい。 新ダート体系は、ダート界のレベルアップを目指すことが最大の目的である。ダートが主戦場である地方競馬の所属馬が、地の利を活かしてJRA勢を迎え撃つ図式が望ましい。単勝人気とは裏腹に、ライトウォーリアが川崎記念JpnIを勝った瞬間、場内は大いに盛り上がりを見せた。 「もっと冷静に努めようと思っていたんですが、ゴールした後、あまりにも場内の雰囲気が凄くて、僕自身も興奮してしまいました(笑)。後で振り返ると恥ずかしい限りですが、それだけファンの方々の声援というのは、気持ちを高めてくれるものですし、ビッグレースで地方馬が活躍することが、競馬の盛り上がりに大きくつながることを改めて実感しました」と、吉原騎手は話していた。 (文:古谷剛彦)