日本の新聞がなくなる日…「この20年で2000万部激減」もう止められない深刻事態
局を集約しても問題解決しない
ローカルテレビ局として頭が痛いのは、収入が低落する見込みの一方でコスト増が待ち構えていることだ。十数年すれば放送設備の更新が必要となってくるが、それが経営の重荷になってきているのである。 こうした状況に対して、総務省は「マスメディア集中排除原則」(一事業者による複数の放送局の経営を禁じている原則)など、民放を規制してきた根幹のルールを大胆に転換することで対応する方針だ。 原則各県ごとに分かれているローカルテレビ局を集約すれば、それぞれに必要だった設備費用は軽減される。こうしたコスト削減で、ローカルテレビ局の経営立て直しを促す狙いである。 しかしながら、ローカルテレビ局を集約することで事態がすべて打開できるわけではない。収入が増えるところばかりとは限らないからだ。 ローカルCMの場合、当該県のみで事業展開している地元企業が広告を出していることが多く、放送エリアの拡大によってこうしたスポンサー企業が求める商圏とのミスマッチが起こるとローカルCMそのものの出稿量減少となりかねないためだ。だからといって、苦し紛れにローカルCM料金のダンピングに走ればローカルテレビ局同士での価格競争が始まり、経営は一気に揺らぎ始める。 ナショナルクライアントからの広告出稿にしても、仮にローカルテレビ局が統合によって放送エリアを3県に拡大したとしても、それまでの3県分を足し合わせた広告額を支払い続ける保証はない。むしろ、減らす方向へと行くだろう。 人口減少によるテレビ視聴者数の減少という根本的な減収要因が横たわる以上、ローカルテレビ局の抱える危機的状況は解消し得ないのである。 そもそも、地元資本が複雑に入り組んでいるローカルテレビ局の場合、経営統合すら一筋縄ではいきそうにない。とはいえ、物理的な境界を消滅させたインターネットの登場の前に、都道府県域にとらわれるローカルテレビ局の限界は明らかである。家庭用ビデオの普及と動画配信サービスの急伸で視聴者のテレビライフは激変した。 地方紙やローカルテレビ局は地域に密着したニュースを掘り起こし、地方行政の監視機能を果たしてきただけに、もし、その存在がなくなったり、弱体化したりすることになったなら、地域社会に及ぶ弊害は限りなく大きくなる。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)