幕府直轄化からの松前氏復帰　大改修された福山館

クナシリ・メナシの戦いは、幕府がロシアへの警戒を強め、蝦夷地（松前藩領以外の北海道）への介入を強める大きな契機にもなった。 このころになるとロシアが千島列島へ進出しており、すでに1778（安永7）年にはロシア人がクナシリアイヌの首長・ツキノエの案内でノッカマップ（根室市内）に交易を求めて来航。江戸時代初期には松前藩領（松前と和人地）以外は領土と認識していなかった幕府も、財政難から蝦夷地の経済的価値を意識するようになり、幕府の老中・田沼意次は1785（天明5）年に初の調査隊を派遣してアイヌとの直接交易も試みていた。 江戸時代の日本は鎖国していたとはいえ、長崎はオランダ・中国、対馬は朝鮮、薩摩は琉球を通して東南アジアや中国と交易している。 カラフトアイヌや千島アイヌは中国やロシアと交易しており、松前は同じように外国に通じる窓口となりえたのだ。 田沼意次の失脚により幕府の蝦夷地支配は頓挫していた。しかし、ロシアが幕府に通商・通航関係を迫ると、老中・松平定信はいよいよ危機感を募らせはじめ、1792（寛政4）年のラクスマン来航を経て、1798（寛政10）年に大規模な調査隊を派遣。日高地方の浦河町～オホーツク海南端の知床および松前藩領を直轄化し、アイヌがロシアに取り込まれることを恐れてアイヌの日本人化策を打ち出すなど、ロシア対抗策としての蝦夷地経営を開始した。1802（享和2）年には箱館奉行を設置して、1804（享和4）年に全蝦夷地を直轄化した。 幕府の蝦夷地直轄化に伴い、松前藩は松前を去っている。1807（文化4）年に幕領だった梁川（福島県伊達市）に転封となった後、ロシアとの紛争が回避され直轄化が廃止された1821（文政4）年、14年ぶりに悲願の旧領復帰を果たした。そして幕末、北方警護を命じられると福山館を大改修し、福山城（松前城）を1854（嘉永7）年に完成させることになる。