中国のバッテリーメーカーが直面する「米議会の反発と特許紛争」
高品質で低コストのリチウムイオンバッテリーは、電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵などのクリーン技術を支えるために不可欠であり、化石燃料への依存からの脱却をもたらすことが期待されている。しかし、これらのバッテリーは主に中国企業によって製造されており、バイデン政権と米国の議員らは、中国企業の成功を不公正な手段によるものとみなし、これを是正しようとしている。 自動車大手のフォードやエネルギー大手のデューク・エナジーなどの企業は、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)との提携や、同社のバッテリーを使用したことで、米国政府の監視対象となっている。フォードは、CATLと共同で進めていたミシガン州の工場の計画を縮小し、デュークはCATL製品の使用を段階的に廃止している。 CATLは、今月初めに米議会下院を通過した法案、敵対的外国へのバッテリー依存からの離脱法(Decoupling From Foreign Adversarial Battery Dependence Act)で名指しされた企業の1つだ。この法案は、国土安全保障省(DHS)が6つの中国企業からのバッテリーやその関連サービスの調達を禁止するもので、2027年10月の発効を目指している。 しかし、それまでの3年間という期間は、米国のバッテリー産業が国産の競争力のある代替製品を開発するためには十分ではなく、ある情報筋は、英紙ガーディアンの取材に、5年から10年の時間が必要だと述べている。こうした現実を踏まえてか、この法案には「代替品が存在しない場合には例外が認められる」という条項が含まれている。 一方、仮に中国企業が米国市場への進出に対する議会の反発を乗り越えたとしても、彼らは、知的財産(IP)に関する継続的な紛争を処理する必要に直面すると米国の大手法律事務所Vincent & Elkinsで副会長を務めるヒラリー・プレストンは述べている。中国企業が米国で製品を商業化しようとする試みは、米国と中国の両方で訴訟に直面しており、これらの訴訟には、EV市場で特に重要な中国バッテリーメーカーのCOSMX(珠海冠宇)やATL(アンプレックステクノロジー)、CATLなどの大手が関与している。 バッテリーは長年、携帯電話やノートパソコンなどの製品にとって重要なものだったが、グローバルな再生可能エネルギー市場の拡大に伴い、その重要性と価値はさらに高まっている。さらに、リチウムイオンバッテリーの主要企業はごく少数であり、世界的な競争の激化によって、企業は知的財産の所有権を主張するために訴訟を厭わなくなっているとプレストンは述べている。