「野球教室で野球人口は増えない」 北の大地で急拡大…親子の敷居下げる“独自ルール”
用具は貸与、ユニホームはTシャツ支給…参加費だけで“仲間づくり”ができる
少年野球の現場を15年間見てきた現役の少年野球監督だけに、前川さんが発案した特別ルールは絶妙だ。 未経験者を想定して1イニングに最低1回はティースタンドを使用しなければならない(2回まで使用可能、打席の途中からでもOK)。3アウトもしくは打者9人が打ち終えた時点で攻守交代。守備は9人制で交代は自由。打者はベンチ入り選手全員が順番に打席に立つ。試合時間は2時間(最長7回まで)。投本間は14メートル、塁間は21メートルと、全日本軟式野球連盟が定める学童4年生以下の距離を採用している。 未経験者が参加するためのハードルを下げる工夫は、ほかにもある。グラブなどの用具を貸与し、ユニホームは参加者に支給される個人名入りのチームTシャツさえ着用すれば、下はジャージでもOK。帽子もツバのあるものなら何でも構わない。また、試合前の1時間のウオームアップは、チームの監督による野球教室を兼ねて行われる。自己負担は参加費3000円と交通費だけで、野球を学び、仲間づくりができる環境が整っている。 「今行われている一般的な少年野球の大会というのは基本的にチームに加盟しないと出られません。でも、加盟するにはハードルが高くて悩んでしまう保護者が増えている中、視野を広げてもらうためにも、選択肢を増やすためにも、こういう気軽に参加できる大会は必要なのかなと思います」と前川さんは話す。 すでに野球チームに所属している子どもたちにも好評だ。試合は金曜日にナイターで行われるため、自チームの活動と重ならない。自チームでは試合の出番が少なく試合に飢えている世代だけに、率先して声を出し、未経験者を引っ張っている。 一昨年札幌でスタートした大会は、野球人口減少に悩む他地域からの要望に応え、今年は全道に規模を拡大する。道央、道南、道東、道北で各100人、6チームずつ結成して代表を決め、今冬に5ブロック8チームで北海道チャンピオンを決める。「まずは全道が手を繋いで、いずれは全国大会開催までいけたらいいですね」と前川さんの夢はふくらむ。
石川加奈子 / Kanako Ishikawa