【大学トレンド】「いま、女子大は…」増える定員割れ 「共学化」にはない意義は?
女子大の変化
こうしたなか女子大は大きく変わろうとしている。これまで人文系(文学部など)、生活科学系(家政、人間科学部など)、保健医療・福祉系(看護、福祉学部など)が多かったが、社会科学系(法、経営学部など)、理工系(工学部など)に進出するようになった。京都女子大法学部、共立女子大ビジネス学部、昭和女子大グローバルビジネス学部、武庫川女子大経営学部、そして奈良女子大工学部、日本女子大建築デザイン学部(仮称、2024年設置予定)などだ。 女性の社会進出が進んだことによって、ビジネス、工学分野を目指す女子が増えた。だが、女子大にこのような学部は数少ない。これまで女子大へ進んでいた層が自分の夢をかなえるため、共学の経営系や工学系学部を目指すようになる。そこで、女子大は女性が将来活躍できる学びの場=経営系や工学系などの学部をつくった。そんな背景がある。
女子教育の自負と自信
女子大は共学との違いを示すため、女子教育の意義をアピールする。たとえば、こんな感じだ。キャンパスは女子だけなので、あらゆる場面で「男性にまかせる」という発想は起こらない。集団をまとめる。組織を運営する。外部と交渉する。そして力仕事もだ。こうして自立心が育まれリーダーシップが身につき、社会に出てからさまざまな分野で活躍する。それは結果的に性別による役割分担がなくなる社会を築きあげていく。ジェンダー平等社会の実現である。 また、女子大にはこれまでの蓄積がある。就職活動において、各分野へ卒業生がはばたいている姿は在校生にとってロールモデルとなる。大きな励みだ。卒業生を乗り越えようとする意欲的な後輩も現れる。頼もしい。女子大にはこうした自負、自信があり、女子教育に誇りを持っている。 女子大は女子大であり続けるために新しいテーマに取り組み、女性の社会進出をサポートする教育改革、学部づくりに力を入れている。一方、いくつかの女子大は共学化、他大学との統合によって新たな展開を考えている。いずれもより良い教育を行うための改革だ。それはチャレンジでもある。女子大の変化をチェックしよう。女子大のチャレンジは、女子学生のチャレンジにつながっていくのだから。
プロフィール
小林哲夫(こばやし・てつお)/1960年神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。大学や教育にまつわる問題を雑誌、ウェブなどに執筆。『大学ランキング』(朝日新聞出版)編集統括。『日本の「学歴」 偏差値では見えない大学の姿』(朝日新聞出版・共著)ほか著書多数。