営業担当者が意思決定にデータを活用する際の注意点
■データ主導のインサイトを活用するための2つの問い ある中堅企業がクラウドサービスの購入に関心があるかもしれないことを、AI(人工知能)ベースのシステムが、テクノロジー企業の営業担当者に提案する。金融会社の営業マネジャーがチームの欠員を埋めるに当たり、リンクトインが作成した採用候補者リストを入手する。製薬会社の営業リーダーが、社内のプロジェクトチームから、数百人単位の人員削減を勧告される。 営業の世界では、ありとあらゆる場面でデータ主導のインサイトや勧告が行われるようになった。同時に「データ主導のインサイトはどのくらい信頼できるのか」という疑問も浮上している。 多くの複雑な要因がある。データの精度と完全性が高い場合もあれば、低い場合もある。データをインサイトに変換するモデルの質にもばらつきがある。間違った決定が、さほど大きな影響を与えない場合もあれば、多くの人に影響を与えたり、長期的に影響を及ぼす場合もある。 今日において、営業で有効な意思決定を下すためには、データ主導のインサイトを採用し、組み込み、あるいは退けるタイミングや方法を把握することが重要になっている。そこで役に立つのが、次の2つの問いに答えることだ。 ・その意思決定によるリスクはどの程度か。 ・そのデータ主導のインサイトは、どのくらい信頼できるのか。 ■意思決定の影響範囲とデータ主導インサイトの信頼性 一か八かの意思決定は、広範かつ恒久的なインパクトをもたらす。重要な決定を誤ると、大きな損失につながり、それを取り戻すのは難しくなる。たとえば、新製品の営業に使うチャネルの決定、インセンティブの設計、新設した重要顧客チームに配属する人材の資質策定などがある。さほど重要でない決定なら、たとえ間違ったとしても、マイナスの影響は小さく、取り戻すのも簡単だ。たとえば、顧客に対する商品購入の提案がうまくいかなかったとしても、簡単に見直すことができる。 データ主導の意思決定がどのくらい信頼できるかは、インサイトを生み出すために使うデータと、そのデータを分析するモデルによって決まる。では、決定の重要度とモデルの信頼性が、営業チームのインサイト利用方法にどのような影響を与えるか、いくつかの例を考えてみよう。