「怖くて自転車に乗れない!」病院が嫌いすぎる夫を襲った恐怖の症状。彼に受診を決意させた“ある日のできごと”とは
そこで直美さんは、副鼻腔炎治療で有名な医師が開業している耳鼻科に予約を取った。いつもの誠さんなら拒否をするところ、この日は素直に応じたという。 「複視も心配でしたが、これを機に手術を受けてくれるかもしれない、という期待もあり、気持ちが変わらないうちにと連れて行きました」(直美さん) 診断の結果、複視の原因ははっきりしないものの、医師からは「手術で副鼻腔炎がよくなれば、複視もよくなる可能性が高い」と言われた。答えを保留にして家に戻ったが、翌日さらに複視は悪化した。
誠さんはついに、「この復視が治るなら、手術をしてやってもいい」と言い出したという。 「『してやってもいい』というのは、医師に対して『なんて失礼な!』と思うかもしれませんが、これは負け惜しみのようなもの。夫が不安でたまらないであろうことは、そばで見ていてわかりました」と直美さん。 その後、誠さんはクリニックから紹介された大学病院で精密検査を受けた。そこでも複視の明らかな原因は不明だったが、検査を受けている最中になぜか複視が治ってしまった。
ともあれ、手術は決行された。内視鏡での日帰り手術ができることから、前出のクリニックに戻って、受けることになった。 「『全身麻酔は信用できない。局所麻酔だから手術を受けるんだ!』などと最後まで、意地を張り続けていました」(直美さん) 誠さんは内視鏡を使って副鼻腔の膿を取り除き、きれいにする「副鼻腔手術」のほか、症状を悪化の原因である鼻中隔(びちゅうかく:鼻腔の内部を左右に仕切る壁)の曲がりを矯正する手術、鼻水を抑える後鼻神経切断術を受けた。
手術はうまくいき、「鼻が通るようになった!」と誠さんは喜んだ。 ただし、直美さんによれば、これで誠さんの医者嫌いが治ったわけではなかった。手術後、クリニックに通わなくなってしまったのだ。 「再手術といわれるのが怖いのかもしれません。困ったものですが、今のところ症状はひどくなっていないので、しばらくは様子を見たいと思います」と、直美さんはあきれ顔で話す。 ■総合診療かかりつけ医・菊池医師の見解 総合診療かかりつけ医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師はこう話す。「まずは鼻の手術を受けることができて、よかったと思います。鼻水、鼻づまりが続くとQOL(生活の質)が低下し、仕事への影響が出かねません」。