大切にしているのは「相手が一番、自分は二番」…芸歴45年「コロッケ」が明かすものまね芸人の極意「絶対にダメなのは自己満足です」
バカみたいに見せる
さらに大切なことは、いかに「バカみたいに」見せるか、だという。 「どんなに頑張っても、絶対に本人にはなれないんですから。本人になった気で格好つけたり気取ったりしているのは絶対にダメ。だからこそ、お客様に笑って頂けるように、バカっぽく見せるのは大切だと思っています」 コロッケがテレビでブレイクした頃、熊本の実家で、母が近所の人にこう言われたことがある。 「おたくの息子さんがねえ、ちょっと頭がおかしかですもんね」 「母は僕にずっと『恥ずかしい』と言っていました。確かに、よその人に言われたらそう思いますよね。でも僕は、それは褒められているんだよ、芸人にとって最高の言葉なんだよと言ったんですが、『そんなことなか。あんた、バカ言われよっと』って。この誤解が解けるまでは時間がかかりましたけど(笑)」 2~3年ほど前から始めているコロッケのネタに「滑舌が悪い阿部寛」というのがある。低音で渋い声だが、台詞が長くなると、だんだん何を言っているのか分からなくなってくる、というものだ。 「もちろん、今の阿部さんは完璧に台詞をしゃべる役者さんですよ。でも、このネタのルーツは、武田鉄矢さん原作・脚本・主演の映画『プロゴルファー織部金次郎』シリーズにあるんです。阿部さんが喫茶店のマスター役で出ているのですが、『いらっしゃいませ』が聞こえづらくて、武田さん演じる織部から『お前、なに言ってんだかわかんねぇよ!』と突っ込まれるシーンのイメージがあったんです」 「もしも、阿部寛が『まんが日本昔ばなし』のナレーションをしたら 」 「バージョン別、阿部寛の『お願いします』の言い方」 など、ネタはどんどん増えているのだが、あまりにバカバカしくて、本気で笑ってしまうのはもちろんである。
松平健とステージを
2024年、コロッケは俳優の松平健(71)とコンビを組んだ「エンタメ魂スペシャル」というショーを行った。時代劇のレジェンドとものまね界のレジェンドが手を組んだ、前代未聞のショーである。 「松平さんとショーをやりませんか? というお話を頂いた時は、本当に嬉しかったです。二つ返事でお引き受けしたんです。松平さんは世代でいうとフォーク全盛の時代なんですね。だからステージではマイク真木さんの『バラが咲いた』などを歌われる。あと、僕と一緒に狩人の『あずさ2号』も。本当に素の松平さんを見せてくれます。爆笑パートは僕がしっかりやりますから、お客様は大満足されていると思いますよ」 このショーは2025年も行われる予定だが、松平もコロッケも多忙を極めているだけに、なかなかスケジュールが合わず、調整中だという。もし、公演案内を見かけたら、チケットは即売必至。必見のステージをぜひ、見て欲しい。 25年もビッシリ予定が詰まっているコロッケだが、これまでの45年間、そしてこれからの芸能生活を送る上で、一時も忘れることのなかった「ある言葉」があるという。 (文中敬称略) 【第3回「『コロッケ』がものまね四天王時代にもカン違いしなかった理由 芸能生活45周年を支えた母親直伝の『5文字の言葉』では、苦しい時も辛い時も、常に忘れずに言い続けていた母からの魔法の言葉を明かす」】 コロッケ 1960(昭和35)年、熊本県生まれ。80年、日本テレビ系「お笑いスター誕生!!」に出演し、銅賞・銀賞を獲得して芸能界デビュー。ものまねのレパートリーは男女を問わず300を超える。ロボットバージョンやヒップホップダンスとの融合など、エンターテイナーとして常に新境地を開拓し続けている。2014年文化庁長官表彰を受賞。2016年2月には日本芸能大賞を受賞した。芸能活動の傍ら、東日本大震災の被災地支援活動を精力的に行っている。 デイリー新潮編集部
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