Apple「年収4,500万円」の基本給で生成AI専門人材を採用!? 背景には競合他社への焦りが? 専門家が解説
◆競合他社で開発が進む生成AI…Appleには焦りがある?
吉田:Appleが生成AIの分野で巻き返しに動いているのは、どういった背景があるのでしょうか? 塚越:さきほどのマルチモーダルもそうですが、とにかく昨今はAIを利用した新しいサービスを搭載したスマホも多く、Appleの牙城である「iPhone」を追撃しています。 例えばAIの分野では、Appleと世界シェア首位の座を争っている「Galaxy」で有名な韓国のサムスン電子が今年1月、通話中の会話をリアルタイムで翻訳する機能を搭載した、新型スマホシリーズ(Galaxy S24)をアメリカで発売しました。翻訳の精度が高ければ、海外旅行などで特に需要があるかなと思います。 あるいは、Googleが自社で作っている「Google Pixel」というスマホには、カメラで撮影した写真に写っていない部分を自動で生成したり修正ができたりする「マジックエディター」という、生成AIを利用した機能を搭載しています。 生成AIはかなり勢いがあり、香港の調査会社によるとスマホ市場全体に占める生成AI対応機能の割合は、2024年は8%ですが3年後の2027年には40%に、出荷台数も年間5億台を超えると予想しています。 ブルームバーグの報道では、iPhoneにGoogleの生成AIモデル「Gemini(ジェミニ)」を搭載することを協議しているということです。Appleでも生成AIを作るものの、Googleとも提携するかもしれません。
◆飽和状態のスマホ市場…「生成AI搭載スマホ」は購買意欲を刺激できるか?
ユージ:スマホに生成AIを搭載する動き、塚越さんは、どうご覧になっていますか? 塚越:スマホは世界市場で飽和状態になっています。スマホも10万円以上する高価格帯もあれば、2~3万円の低価格帯のものも出ています。利益率の高い高価格帯を売るには新たな機能が必要ということで、生成AIが注目されているということです。 Appleは2007年の初代iPhone発売から圧倒的な新しさでシェアを拡大し、その後はiPadやMacBookといったパソコンと連動してApple経済圏をつくってきました。その勢いは確かにすごかったのですが、今ではそれだけだと、ちょっと厳しいという状況になってきています。 AppleはApple Vision Proというゴーグル型のウェアラブル端末を出しましたが、値段も50万円くらいで、普及するにはまだまだ時間がかかります。さらには、Appleは長年「Apple Car」という自動車開発プロジェクトに取り組んでいましたが、これも終了する方針という報道もあります。(現状では)スマホに代わるデバイスがないので、Appleであれ他社であれ、スマホに力を入れるのは必然かなと思います。 ユージ:生成AIが搭載されることによって、今後スマホはどうなっていくのでしょうか? 塚越:生成AIをどう使っていくかについて、もっと新しくて面白い使い方をAppleも他の会社もみんな考えています。そうしないと、購買意欲が生まれない。スマホを買ってくれないということになります。Appleは「Think different(発想を代えろ、違う考え方をしろ)」をスローガンに掲げて、「違う考え方をして新しいものを作れ」と言ってきましたが、そういったものをどんどん出していかないといけません。消費者からは、そういうことが求められていると思います。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2024年3月27日(水)放送より)