ガールズケイリン若手期待の松井優佳が苦しんだ「卒記クイーン」のプレッシャー「3着以内に入って当たり前の感じが大変でした」
そして松井は、「高校時代にガッツリ自転車にのめり込んだので、大学の最初の頃は少し自転車から離れた時期もあったんですよ」と笑顔で振り返る。その間はアルバイトをするなど、女子大生としての生活も満喫し、結果的にそれがリフレッシュの期間となった。再度、競技に気持ちを向けた学生生活後半は、コロナ禍により授業のほとんどがオンラインになったため、高校時代を過ごした鹿児島に移り、トレーニングに邁進した。そして最終的にガールズケイリンへ進む道を選ぶ。 「大学の前半は一度、モチベーションが切れたこともあり、しっかり休みました。休めば、それ以前より上の自分になって戻れるという確信があったんです。競技を再開してからは、2020年の鹿児島国体をひとつのモチベーションにしていたのですが、それが延期になってしまい......。ガールズケイリンにいけば、またそういったレースで走れる機会もあるかなと思ったこともプロを目指した理由のひとつです」 もしガールズケイリンに進んでいなければ?という問いに、「イベントを企画したり、チケットを売ったりなど、スポーツ関連の仕事をしていたと思います」と語る。大学に進んだ4年の歳月は充実しており、遠回りではなかったという。 【挑戦者として挑む2年目の覚悟】 今、松井が目指すのは「自分でレースを動かせる選手になること」。そのための脚づくりを進める毎日だ。 「力で押し切れる選手になりたいんです。もちろん応援してくれる方たちのために順位にこだわらないといけませんが、今は他の選手の後ろにつく走りで確実に上位に入るより、自力で勝負し、1着を目指すことが将来につながると思っています。そのためには武器であるダッシュ力をもっと磨きたい。この世界は短所を補うだけでなく、長所を伸ばし続けないと、上で戦えませんので」
ガールズケイリン1年目は『卒記クイーン』(※)の肩書に重みを感じたまま過ごした。「緊張しやすいタイプでメンタルは強くない」と認める松井は、周囲の注目に負けないため、なるべく感情に波を作らず"無"の意識になることを心がける。※卒業記念レースの女子優勝者の俗称 「自分はチャレンジする立場。あまり考えすぎず、強い選手を相手にしても自分の力をすべて発揮して全力で挑むことを考えて走るだけです。とにかく頑張るしかないですね」 頑張るしかない――。覚悟を決めた松井の2年目の戦いぶりに注目だ。 【Profile】松井優佳(まつい・ゆうか)1999年4月27日生まれ、大阪府出身。中学から自転車競技を始め、高校は名門の鹿児島県立南大隅高校に進学。将来を有望視され、1年時から数々の国際大会に出場する。国内では3年時のインターハイで女子ポイントレース優勝を果たす。進学した同志社大学では2022インカレスプリント500mTTで1位を獲得するなど好成績を残す。日本競輪選手養成所での在所成績は2位で、卒業記念レースでは史上7人目の完全優勝を飾った。2023年4月にガールズケイリンデビューを果たす。2024年4月ガールズフレッシュクイーン(高知)に選抜され出走予定。
加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro