友好の証? 中国の「パンダ外交」とは レンタル料は年間最大1.6億円
中国は海外への友好の証として、ときには怒りの証や報奨として、ジャイアントパンダを利用してきた。貸与はオス・メス2頭で10年契約のことが多く、レンタル料は年間で最大約100万ドル(1億5800万円)。動物園にとっては飼育費の負担もあるが、観光客を引き付け、収入を生み出す動物だ。パンダ外交とは何か、どのように機能しているのかを説明する。 中国の李強首相は今週のオーストラリア訪問中、パンダの貸与を申し出た。中国は2020年、豪州からの農産物や鉱物の輸出を制限。豪州との外交問題に発展したが、両国関係は現在、改善しつつある。 中国原産のジャイアントパンダは国家の友好だけでなく、中国の怒りを表すのにも使われている。 では、パンダ外交とは何か。 中華人民共和国は1949年の建国以来、国の国際的イメージを高めるためパンダの贈与や貸与を行った。 社会主義国との関係強化のため、1950年代にソ連へ2頭、1965―80年には北朝鮮に5頭を贈与。 1972年、米国のニクソン元大統領の歴史的な訪中の際には、リンリンとシンシンの2頭を米国に贈った。米中関係の正常化の兆しであり、中国の外交政策にとって極めて重要な瞬間だった。 ニクソン大統領の夫人は当時こう語った。 パット・ニクソン氏 「パンダという贈り物は素晴らしい。 どんな年齢の子供でも喜ぶだろう私もその1人だ」 日、仏、英、スペインなどにも贈られた。 中国は、個体数の減少により1984年にパンダの贈与を中止。代わりに、動物園への貸し出しを始めた。 オス・メス2頭で10年契約のことが多く、レンタル料は年間で最大約100万ドル(1億5800万円)。 パンダの飼育は動物園にとって費用がかかるが、観光客を引き付け、収入を生み出す。 「堂々としている」 「魅力的だ」 「かわいかった」 レンタル契約の終了後は通常、中国南西部の保護区に戻される。海外で生まれた赤ちゃんも、中国での繁殖プログラムに参加するため母国に送られる。 貿易相手国への報奨としてもパンダを利用してきた。 オックスフォード大学の2013年の研究によると、中国がカナダ、仏、豪にパンダをレンタルした時期は、中国とのウラン取引の時期と「一致」していたという。 シンガポール、マレーシア、タイなどへのパンダ貸与も自由貿易協定の調印と同時期だった。 時には、中国が特定の国家に不満を表す時にもパンダは利用された。 2010年、オバマ米大統領(当時)とダライ・ラマの会談に反対し、中国は米国生まれのパンダ2頭を返還させた。北京はダライ・ラマを分離主義者とみなしている。 昨年11月には3頭のパンダが去り、米国には4頭だけになった。 ただ同月、習近平国家主席は米国でバイデン大統領と会談。米国にパンダを送ることに前向きだと示唆。「関係改善に対する中国の意欲の表れ」と受け止められた。 中国国内の保護策により、パンダの危機レベルは「絶滅危惧種」から「危急種」へと1つ下がった。 現在、世界の動物園や繁殖センターには728頭のパンダがいる。