『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S2開幕早々にみたシリーズの醍醐味 第1話から積極的な脚色
シーズン1で衝撃的デビューを果たしたクレア・キルナーがシーズン2第2話の監督に
主役は戦場に赴くことなく、原作では必ずしも中心に位置するとは言い難い2人の女性レイニラとアリセントだ。緊迫の局面においてなおも最悪の事態を避けようと踏みとどまる彼女らは、最終回を前にして大量虐殺に走ったデナーリスへの反証とも言える(ひと足早くこれを達成したのが本シリーズの影響下にある『SHOGUN 将軍』の鞠子(アンナ・サワイ)かもしれない)。アリセントがかつての親友の愛息を悼む一方、亡骸を見つけることも叶わず、浜辺に打ち上げられたドラゴンの翼を見て打ちひしがれるレイニラは、狙うはエイモンド・ターガリエン(ユアン・ミッチェル)の首と口走る。「息子には息子を」と報復計画を進めるのは、かねてより開戦論を唱えてきた王配デイモン(マット・スミス)だ。彼は捕縛した白蛆ことミサリア(ソノヤ・ミズノ)ーー本作における数少ない一般市民であり、権力の監視者であるーーの情報を頼りに、2人の下手人を仕立て上げる。原作小説によれば、その本名は歴史の闇に埋もれたとされる通称“血狂い”と“チーズ”だ。赤の王城のネズミ駆除業者であるチーズはキングズガードすら知らない隠し通路に精通し、王族の寝室に入り込むや凶行に及ぶ。ここでもまた脚色が施され、彼らの狡猾さと残忍さが別の角度から強調されている。開幕早々この血生臭いエピソードを用意するところに、かつて“レッドウェディング”で世界中を阿鼻叫喚の地獄に叩き落とした本シリーズの醍醐味がある。 さて、第2話の注目は、なんと言っても監督人事。前シーズンで共同ショーランナーと監督を兼任したミゲル・サポチニクや、3エピソードを手掛けたベテラン、グレッグ・ヤイタネスは降板。一方で、衝撃的デビューを果たしたクレア・キルナーがシーズン2では第2話、第5話を担当する。人物の配置で心情と力関係を表すミザンス演出は、宮廷陰謀劇である『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の本懐。キルナーの演出は、合戦シーンが多くなるであろう今回、さらなる新風を吹き込むことだろう。最初の山場は早くも第2話だ。
リアルサウンド編集部