日本で初めて「パンダの採血」に成功!“スーパーパパパンダ”が切り拓いたパンダの健康管理法とは【独占取材】
和歌山県・白浜。リゾート地としても人気の街に、開園から45年を迎えたテーマパーク「アドベンチャーワールド」がある。ここは“日本一のパンダファミリー・浜家”が暮らすテーマパークとしても知られ、園内には、これまで10頭のジャイアントパンダを産み育てた良浜(らうひん)という、メスのお母さんパンダがいる。 良浜(らうひん)が10頭の母になるまでに、どのような物語があったのだろうか―。中国国外の飼育施設で世界一の繁殖実績をあげる「アドベンチャーワールド」。そこで暮らす良浜の命の物語を、遥那もよりさん(@moyoribiyori)が「パンダのミライー浜家・良浜 いのちの物語ー」と題し漫画化。24年4月19日に書籍として発売されたばかりの同作品から、一部を抜粋してお届けする。 【漫画を読む】パンダの健康管理ってどうやってするの? ■良浜のパートナー・永明の「モテる紳士の特殊能力」とは? 今回は、良浜との間に10頭の子どもをもうけた“スーパーパパパンダ”永明(えいめい)のエピソードを紹介する。 おいしい竹しか食べないグルメなオスパンダ・永明。アドベンチャーワールドに来たばかりのころは、すぐにお腹を壊してしまうため、スタッフがおいしそうな竹を探して奔走していたという。 永明は、中国へ帰国するまでの28年間で、梅梅との間に6頭、良浜との間に10頭の計16頭の子どもをもうけた。この偉業から、永明は“スーパーパパパンダ”と呼ばれていた。 これほどたくさんの子どもが生まれたのは、永明が「メスのパンダに合わせる能力」を持っていたからだ。パンダのメスの発情期のピークは非常に短く、1年に2~3日しかないが、永明はそのタイミングを逃さずメスに合わせて交配することができた。 良浜のマーキングを永明がやたらと気にしていたため、スタッフが良浜の様子を注意深く観察したところ、良浜が発情期を迎えていることがわかったそう。その年2頭の間には双子のパンダが生まれ、それぞれ「桜浜」「桃浜」と名付けられた。 パンダのメスは、発情行動が現れる前に発情ホルモンが少しずつ上昇する。永明は嗅覚が鋭いため、メスの些細な変化にスタッフより先に気付くことができたそうだ。 ■日本初の採血に成功した“スーパーパパパンダ” 永明は長寿のパンダであることでも知られる。飼育下のパンダの平均寿命は20歳ごろであるが、永明は2022年に30歳になった。これは人間で言うと90歳くらいだそう。健康体で、42本ある歯もすべてそろっていた。 ちなみに永明は、歯を定期的にチェックするために、スタッフの合図で口を開くトレーニングをしていた。合図に合わせて大きく口を開けたタイミングで急いで口腔内の写真を撮り、異常がないかチェックをする。 歯の検診のほかに、血圧測定なども行う。この場合は、人間と同様に腕にバンドを巻き付けることで検査をする。毎回「検査に協力すればごほうびがもらえる」と教えていると、学習して協力してくれるようになるという。 このように、動物に協力してもらいながら医療行為を行うための訓練を「ハズバンダリートレーニング」という。永明はこの方法で、日本で初めて採血に成功した。 2023年2月に中国へ帰った永明。セレモニーは、なんと2000人以上が見送りに来るほどの大盛況だったという。カメラを向けると堂々とポーズを取るようなスター性が、人々に愛された理由なのかもしれない。 奥が深い、ジャイアントパンダの出産と子育て。今後も、そんな母・良浜(らうひん)の命の物語をつづっていく。
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