大坂なおみをテニスコートで世界有数の“スーパーヒーロー”に変身させる「奇妙な感覚」<SMASH>
大会前には不安を抱いていた彼女が、大会第10シードを圧倒していた。 ただもちろん、テニスプレーヤーにとっての“パワー”は、突如、天から降ってくるものではない。 「(2週間前の)シンシナティからここまで、たくさん練習し、多くの時間をジムで費やしてきた。だから速く動けていると感じたし、ボールを自分の打ちたい所に打てる感覚があった」 同時にシンシナティ・オープン後、彼女は、「自分を“攻撃的選手”と規定する必要はない」とも感じていたという。 「私はゲームが好き。ラリーをしながら、好機を見極めて攻めるのが好き」 だからこそ彼女は、オスタペンコ相手に遮二無二打ち合うのではなく、「私の重く速いボールで、相手にミスをさせようとした」という。その狙いは、21本を数えた相手のアンフォーストエラーに顕著に映し出される。ちなみに大坂のそれは、試合を通じてわずかに5本。ウイナーの数は、オスタペンコが21本、大坂は19本と、ほぼ互角であった。 試合後の会見で、大坂が口にした「スーパースーツ」や「切り替え」の言葉。それらを聞きながら、ふと、思い出されたことがあった。 それは以前に、大坂の姉のまりさんに教えてもらった、二人の幼少期の思い出。 「日本からニューヨークに引っこした子どもの頃、お母さんが『テニスの王子様』と『セーラームーン』のビデオを持って来てくれたので、私たちはその二つのアニメを繰り返し何度も見ていた」 ニューヨーク、テニス、そしてドレスと変身とスーパーパワー……、奇しくもそれらのキーワードは全て、幼少期の記憶や体験で、一つに結びついていた。 豪快なフォアハンドのウイナーを叩き込み、わずか1時間4分で勝利し天を仰いだ彼女は、握手を終えてベンチに戻ると、タオルに顔を埋めた。 変身が解けたかのように“スーパーヒーロー”は姿を消し、溢れる涙をぬぐう、素の大坂なおみがそこにいた。 現地取材・文●内田暁
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