【事業承継の連携】生産性、成長性高めて(11月4日)
東邦銀行の子会社「東邦コンサルティングパートナーズ(TCP)」と福島銀行は先月、県内事業所の円滑な事業承継を後押しする業務提携を結んだ。「金利のある世界」の復活が産業界再編の呼び水になると指摘される中、合併・買収(M&A)での選択肢を広げる取り組みは時代の要請とも言える。仲介業務にとどまらず、再出発する事業体が生産性と成長力を高めて飛躍できるよう支援すべきだ。 TCPと福銀は、事業の譲渡・受託の仲介依頼を受けた相手先から承諾を得た上で、それぞれの持つ企業情報を提供し合い、交渉相手を探す。TCPが実務を担当する。帝国データバンクによると、東邦、福島両行をメインバンクとする県内企業は合わせて約1万1千社に上る。業務提携によって、より幅広い範囲からM&Aの相手先を探し出せるようになる。企業再編の加速により、産業界の活性化を後押しする地域金融機関同士の意欲的な連携事業とも前向きに捉えられる。
2022(令和4)年に県内で休廃業・解散した企業は785社に上るが、約4割は黒字経営だったという(帝国データバンク調べ)。後継者不足などが背景にあるとみられる。収益を上げているにもかかわらず、雇用や長年蓄えてきた貴重な技術、サービスのノウハウが失われる事態は看過できない。経営者の相談に親身になって応じ、本県経済を支える地銀のネットワークを仲介業務に存分に生かせる体制を早急に整えてもらいたい。 日本経済は、30年に及ぶデフレ軌道から本格的に脱する極めて重要な局面を迎えている。企業活動に何より求められているのは、生産性と成長性を高める努力だろう。生産活動の効率化によって賃金の引き上げを実現し、新たな技術やサービスを磨いて事業の付加価値を高める。実現するためには、企業活動に最も身近な存在である金融機関の後押しが欠かせない。継続した経営支援に両者の取り組みを発展させることができれば、全国のモデルケースとなるはずだ。
TCPと福銀は、県内の金融他社との連携も視野に入れている。今回の枠組みに信金信組も加われば、幅広い規模の企業が網羅され、業務は一層充実する。(菅野龍太)