【韓国政界大混乱】逮捕状あっても大統領を逮捕できず捜査機関があたふた、一方で尹錫悦大統領の支持率急上昇の謎
それでも公捜処は1月3日、尹大統領の逮捕令状を執行しようとしたのだが、大統領警護処所属の200人余りの警護隊員がスクラムを組んで全力防御したため不発に終わった。以後、1次令状執行に失敗した公捜処は合同捜査本部に加わる警察に「逮捕執行を一任する」という公文書を送ったが、警察は公捜処の公文書に法的欠陥があるとし断った。結局、公捜処は6日で効力が満了した逮捕令状の効力延長を西部裁判所に申請する一方、事前拘束令状の申請も検討しているという。 逮捕令状は取り調べのために容疑者の身柄を確保するもので、拘束令状は文字通り容疑者を拘置所に収監するための令状だ。2020年に設立された後、捜査経験不足や人材不足などでまともに起訴したことがほとんどない「開店廃業」状態だった公捜処としては、何としてでも現役大統領に手錠をかけて存在感を示したいと意欲を燃やしているようだ。 ■ 大統領支持者が公邸前に大集結 一方、容赦なく迫ってくる捜査に危機感に包まれた尹大統領の支持者らは総結集している。尹大統領の官邸前には毎日1万人を超える支持者が集まり、3交代で官邸付近を護衛する警護態勢を整えた。 その向かい側からは、民主労総が主導する弾劾賛成集会がジリジリと官邸に向かって進んでおり、これを阻止しようとする警察機動隊と小競り合いが続いている。普段は静かな高級住宅街である漢南洞一帯はまるで戦場を思わせる現場に変わってしまっている。
■ 混乱の中、大統領と与党の支持率が急上昇中 尹大統領の支持者が結集したことで、世論調査に「異変」が起きている。大統領の支持率と「国民の力」党の支持率が急騰しているのだ。定期的に大統領支持率を調査してきたギャラップとリアルメーターは、尹大統領弾劾以後、大統領支持率調査を中断しているのだが、他の世論調査では尹大統領の支持率が弾劾以前より10%以上も高くなっているのだ。 特に、5日に発表された韓国世論評判研究所(KOPRA)が『アジア・トゥデイ』紙の依頼で実施した世論調査では、尹大統領の支持率が40%まで上がり、「国民の力」の支持率が「共に民主党」のそれを上回るという現象が起きた。朴槿恵大統領の弾劾当時に、朴大統領の支持率が4%まで下がったことを思えば、現在の尹大統領の支持率反騰は保守層の恐ろしいほどの巻き返しぶりがうかがえる。 大統領の支持率が上がったことで、「国民の力」の議員らも現職大統領に対する逮捕令状発給の不当性についてより積極的にアピールするようになった。逮捕令状の執行を体で阻止しようという議員らも出てきた。 前出の公捜処法によると、公捜処が捜査できる範囲は「高位公職者の職権乱用と不正疑惑」に限られる。そのため公捜処は、〈大統領の職権乱用疑惑の一環として内乱罪を捜査する〉という論理を展開している。ところが憲法には「現職大統領は権力乱用や不正疑惑では捜査を受けない」と明記されている。現職大統領を捜査できる容疑は、内乱と外患だけなのだ。