奈良育英が県4連覇に王手! 一条に先制許すも前半で逆転、主将・竹田「全国大会で勝つことを目標に掲げてきた」:奈良
[11.3 選手権奈良県予選準決勝 一条高 1-4 奈良育英高 橿原公苑陸上競技場] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 11月3日、橿原公苑陸上競技場で第103回全国高校サッカー選手権大会奈良県予選準決勝が行われた。第2試合では、一条高と奈良育英高が対戦し、奈良育英高が4-1で勝利し、4連覇に王手をかけた。 試合の序盤は、互いに前線へと攻め入るものの、簡単にゴールを奪わせず、拮抗した時間が続いた。スコアボードが動いたのは、18分。カウンターの仕掛けからセットプレーのチャンスを得た一条は、MF佐野健人(2年)の左CKにMF小西陽仁(3年)が頭を合わせ、ゴールネットを揺らした。 ビハインドとなった奈良育英は、徐々にペースを掴みはじめ、37分にMF森嶋大琥(2年)からのボールを受けたFW藤川陽太(3年)が、相手をうまく剥がしながら利き足ではない左足に持ち替え、力強いシュートを放った。これで同点に追いつき、さらに前半終了間際の40分には、藤川のクロスに森嶋が頭を合わせ、逆転に成功した。 前半に逆転できたことで、連覇中の奈良育英の力強さは後半さらに増した。プレスを強めて前線へと向かう一条の攻撃にも慌てることなく集中して対応し、MF有友瑠(3年)を経由して攻撃へと繋げていく。後半6分にはPKを獲得し、森嶋が冷静にゴールへと蹴り込み、リードを広げた。さらに33分には交代出場していたDF平原颯大(3年)が森嶋からのクロスを受けてダメ押しの4点目を奪い、タイムアップ。4-1で奈良育英が逆転勝利を収めた。 「試合の入りの部分が、良くなかった」(梶村卓監督)奈良育英だったが、前半中に逆転して見せたことは、連覇中の王者としての風格を感じさせるものだった。 威厳を取り戻すきっかけになる同点ゴールを挙げた藤川は、夏の県大会決勝ではチャンスを作りながら得点することができずに敗れ、「すごく悔しい思いをした」という。「自分が点を取らなければ、チームは勝てない」ことを痛感し、「チャレンジしていかなければ、点も取れない」ことを夏に学んだ。この日は1ゴール1アシストの成果はあったが、他にも決定機はあった。それを決めきれなかった反省を踏まえて、「しっかり相手を見て、コースを見極めて、次の試合ではさらにゴールを狙っていきたい」と決意を新たにした。 悔しさを味わった夏以降、藤川に限らず、奈良育英はチーム全体で成長を重ねてきた。 キャプテンを務めるDF竹田秦(3年)は、「決め切ることやシュートで終わることなど、前のパワーは強くなっていると感じている。また、夏のときよりも、チーム全体がよく声を出して喋ることができるようにもなった」と、成長の手応えは感じている。とはいえ、この日も「自分たちは、全国大会で勝つことを目標に掲げてきた。最初に失点し、決定機で決め切ることができなければ、全国では通用しない」という課題を得た。「決して奈良県大会だからと気を抜くわけではないですが」と前置きした上で、「次の決勝戦も含めた全国大会までの期間に、自分たちにできることをどれだけ出しにいけるかが重要」だと語り、決勝でも全国大会に臨めるだけの質を見せたい意志を示した。 一方、敗れはしたものの、奈良育英の目を覚まさせるような先制点を奪った一条。今大会で夏以降磨き上げてきた成長を示してきていた奈良育英高にとっては、初めての失点だった。 「3連覇中の相手だったので、チャレンジャーとして、受け身にならず、強い気持ちで立ち向かっていこう」(澤井匡生監督)と臨んだ試合だったという。後半に巻き返すことは叶わなかったが、どのような気持ちで臨んだかが見る者にもはっきりと伝わってくる、一条らしい連動した守備とスピード感のある積極的な仕掛けも見せていた。 また、今年は奈良県1部リーグで降格圏に入るなど苦しい戦いを強いられていたが、この日は試合前のアップ段階から終始、活気ある前向きな声を掛け合い、この舞台を楽しんでいるような様子も印象深かった。悔しい結果ではあったが、「5人しかいない3年生がチームを引っ張ってくれ、一体感をもたらしてくれた」ことには澤井監督も頬を緩ませ、「3年生と一緒にとても貴重な時間を過ごした2年生、1年生が、悔しい思いも含めて来年に繋げてくれることを期待したい」と言い、選手たちのいる方へと温かい眼差しを向けた。 (取材・文 前田カオリ)