沖縄県議選、知事与党が大敗 玉城氏、非常に厳しい県政運営に
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)が16日投開票され、玉城デニー知事を支える県政与党が改選前から4議席減の20議席となり、半数を大きく割り込んだ。玉城知事は、政府が進める米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に反対を貫く考えだが、少数与党となり、厳しい県政運営を迫られる。県政野党の自民は2年後の知事選での県政奪還に向けて弾みがつく形となった。投票率は45・26%で過去最低だった。 【写真】万歳三唱する自民党の関係者ら 玉城知事は17日、県庁で報道陣の取材に応じ、今後の県政運営は「丁寧に説明し、理解を得ながらやっていきたい」と述べた。辺野古移設については「反対の民意は弱まっていない。与党が議席を減らしたから民意が弱まったということはあり得ない」と強調した。 毎日新聞の集計などによると、県政与党は共産、立憲民主、社民などの20議席。県政野党は、自民が公認候補全員が当選して2増の20議席、野党系無所属が1議席。中立は公明4議席、日本維新の会2議席、無所属1議席で、野党・中立を合わせて28議席となり、与党を大きく上回った。県議会で自民・公明などの保守勢力が多数派となるのは2008年以来16年ぶり。 改選前の県議会構成は県政与党が24人。野党は自民が18人で、維新系の中立会派3人と公明2人、野党系無所属1人を合わせると24人で与党と同数だった。中立会派所属の議長が採決に加わらないため、与党がかろうじて主導権を握っていた。 今後は少数与党となり、玉城知事が公約に掲げる政策の実現は大きく制約される可能性がある。辺野古移設などの基地問題について米側に直接訴える足場としてきた米ワシントンの県事務所の維持費予算などが認められない可能性がある。 県議選は13選挙区に75人が立候補した。石垣市選挙区(定数2)は無投票当選で、16日は残る12選挙区で投開票された。 県政与党は玉城県政での子育て支援策の実績などをアピールしたが、近年の選挙で重要な争点となってきた辺野古移設計画を巡っては工事が進む一方で、知事側に有効な対抗策がない状況で支持が広がらなかった。 自民は派閥の政治資金パーティー裏金問題で批判を受けたが、党幹部は前面に出ず、立候補者が政府や市町村と連携した地域振興を訴えたことが功を奏した。林芳正官房長官は17日の記者会見で「今後も地元の皆様への丁寧な説明を行い、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、基地負担の軽減を図るため全力で取り組んでいく」と述べた。【比嘉洋、喜屋武真之介、鈴木悟】 ◇沖縄国際大・佐藤学教授(政治学)の話 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対で結集した「オール沖縄」勢力は保守系の経済人の多くが離脱して実質、革新政党だけになり、労働組合も弱体化してしまった。辺野古移設についても、県民は「もう止められないんだな」と思わざるをえない状況だ。 玉城デニー知事は告示前に中学の学校給食費の無償化を打ち出したが、選挙目当てだと批判され、逆風になった。逆に自民党は党本部から有力政治家を入れず、裏金問題の影響を食い止める策が功を奏した。今回の結果は「オール沖縄」勢力への壊滅的な打撃となり、立ち直ることは難しいのではないか。 ただ、辺野古の基地建設や自衛隊の増強に、沖縄県民がもろ手を挙げて同意しているわけではない。県民がミサイル基地の最前線で戦うことを選んだわけでもない。戦争になっていいと思っている人はいないからこそ、知事は自民とも対話をしながら県政運営を進めていくべきだ。