「中華民国建国113年」を記念する双十節祝賀式典で演説する頼清徳総統＝10日、台北（撮影・後藤希）

　【台北・後藤希、北京・伊藤完司】台湾の頼清徳総統は10日、「中華民国建国113年」を記念する双十節（建国記念日）祝賀式典の演説で「中華人民共和国には台湾を代表する権利はない」と主張した。5月の就任演説に続き、台湾は中国と「互いに隷属していない」とも述べ、台湾を領土の一部とする中国の原則を否定した。中国当局は反発しており、頼政権は中国が軍事演習などで圧力を強める可能性があるとみて警戒している。 　頼氏が双十節式典で演説するのは就任後初めて。式典は台北市の台湾総統府前であり、日本からは山東昭子前参院議長ら参院議員5人が出席した。 　頼氏は演説で「台湾海峡の平和と安定の現状を維持する努力は変わらない」と強調。中国とは気候変動や感染症予防、地域の治安維持に共に取り組み、「平和的共栄」を追求したいと述べた。 　これに対し、中国外務省の毛寧副報道局長は10日の記者会見で「台湾は中国の不可分の領土であり、中華人民共和国は全中国を代表する唯一の合法政府だ。中国が統一するという歴史の大勢は変えられない」と反発した。 　中国は頼氏を「台湾独立派」として敵視し、5月の総統就任演説を受けて台湾を包囲する形で軍事演習を実施した。台湾国防部（国防省）は中国が10日に台湾の防空識別圏（ADIZ）上空を通過するロケットの発射を予告したと発表している。 　台湾は1912年に南京で建国された「中華民国」を正式名称とし、この年を独自の暦の元年に規定。頼氏は5日の双十節関連行事で中華民国は中華人民共和国より歴史が長いと指摘し、「中華人民共和国は、中華民国の人々の祖国には絶対になり得ない」と発言し、中国が反発していた。