『猿の惑星/キングダム』監督インタビュー。「これは”はじまり”の物語」
『猿の惑星』は、観客が“自分自身”を投影できる
映画は、仲間を取り戻すために強大な王国に立ち向かう猿ノアのドラマ、彼が出会った人間ノヴァのドラマが並行して描かれる。そのため、物語はキャラクターやアクションに“伴走”するように寄り添い、ノアとノヴァの視点を行き来する。 「本能的にやっていることなので、自分で明晰に説明はできないのですが、常に“視点”について、カメラを置く位置について、そのショットの中で何が見えていて、何が見えないのかについては考え続けています。どの作品を撮る時でも観客が“体感”していると感じてもらえる視点を持ちたいと思うのです。 さらに本作では視点をふたつ持つことを制作の初期の段階から決めていました。ある時点ではノアの視点から物語を描き、ある瞬間に彼が見ていたノヴァの視点にシフトする。ふたつの視点で最後まで描こうと思ったわけです」 ノアとノヴァはそれぞれが大きな変化に向き合い、相手に対してどう振る舞うべきか揺れ動く。新しいキャラクター、新たな旅、新たな出会いと変化のはじまり。完全新作だけにその展開は予想がつかないものになる。 「シーザーを主人公にした前三部作(『猿の惑星:創世記』『…新世紀』『…聖戦記』)は“終末”が描かれたと思います。シーザーの人生と物語の終末、人類が支配者だったそれまでの世界の終末。しかし、この作品から新しい章になります。つまり、これは”はじまり”の物語。猿と人間が複雑な関係をどう扱うのかが描かれるのです」 興味深いのは、過去作でも神話を感じさせる描写を多用してきたボール監督が、『猿の惑星』という神話的なドラマの監督に就任したことだ。 「そう言ってもらえるのはうれしいです。子どもの頃から古典的な英雄の旅や、神話的なドラマに魅了されてきましたし、私の映画のスタイルは神話的なもの、神秘的なドラマと相性が良いという自覚もあります。宮崎駿監督の作品にも普遍的なヒーローについての人間的な物語を描いたものがありますよね。私はそういう作品にもすごく惹かれるんです。 この映画では特に“神話性”について話し合いました。シーザーの神話について、ノアの道のりについて考えましたし、いくつかの場面では神話を感じさせるような、主人公の運命を感じさせるようなショットを意識して入れています。 『猿の惑星』の面白いところは、観客がスクリーンの世界に“自分自身”を投影して観ることができるところだと思います。観客のみなさんには映画館で観て、楽しんで、いろいろと考察してもらいたいです」 『猿の惑星/キングダム』 公開中 (C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.