児童虐待、ヤングケアラー、ジェンダー問題…杉咲花ならではの好演で魅せる「52ヘルツのクジラたち」
先月、U―NEXTで配信が始まったのが、映画「52ヘルツのクジラたち」です。配信は先月から開始で、なんと、今年の3月に劇場公開されたばかり。半年も経たないうちに自宅で、もしくは他人の家でも見ることができちゃうというのは昭和生まれの人間にとっては驚きでしかありませんね。 この映画は、2021年の本屋大賞を受賞した町田そのこの同名小説を映画化したものです。本屋大賞受賞作品はかなり多くの人が読んでいるはずなので、ぜひどんな風に映像化されているか見てみてはいかがでしょうか。 傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた貴瑚は、母親に虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会います。かつて自分も家族に虐待され、搾取されてきた貴瑚は、少年を見過ごすことができず、一緒に暮らし始めるのだが…。 児童虐待、ヤングケアラー、ジェンダー問題など、現代社会の問題がこれでもかというほど出てきます。ですからちょっと重いです。重いと、私などはすぐ感情移入しちゃって途中で一時停止して古今亭志ん生師匠の落語を聞いて気持ちを入れ替えたりしちゃうんですけど、この作品はそのようなことがありませんでしたね。それはやっぱり主演の杉咲花でしょう。この女優さんは大河ドラマ「いだてん」を見てから「いい!」と思っておりまして、心の中では「杉咲花ちゃん」と呼んでいます。大河ドラマから数年経ち、すっかりと大人の役者になっておられるのです。若くして白髪が生えるほどの苦労をしてきた少女というのは、かなり難しい役どころです。そんな少女が地獄のような生活から抜け出して、少しずつ幸せをつかみつつあるかと思ったらまた突き落とされてしまう。それぞれの境遇を上手く演じているのです。 自分がこんな立場ならどうするか、身近にこんな人がいたらどう接するか。一度は考えてしまいますよ。 (立川志らべ) ※配信は予告なく終了している場合もあります