[MOM4985]札幌大谷FW真浦劉(3年)_弱気な自分は夏のあの日に置いてきた。11番のストライカーが感謝と恩返しの「3年間のベストゴール」!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ Sponsored by アディダス ジャパン] [12.29 選手権1回戦 札幌大谷高 1-1 PK12-11 寒川高 柏の葉] 【写真】「美しすぎ」「めっちゃ可愛い」柴崎岳の妻・真野恵里菜さんがプライベートショット披露 携えた感覚は、この晴れ舞台でより研ぎ澄まされる。はっきりと湧き上がったイメージを実現すべく、マーカーと駆け引きしながら、自分のエリアへと飛び込んでいく。ボールが頭に当たった瞬間に、もうゴールは確信していた。 「良いところにシュートが入って良かったなと思います。この3年間を振り返ってもベストゴールかなと。それを今日に持って来れたのも嬉しかったです。本当に気持ち良いゴールでした」。 札幌大谷高(北海道)の11番を背負った献身的なストライカー。FW真浦劉(3年=アプリーレ札幌U-15出身)が全国の舞台で奪ったパーフェクトな得点は、多くの人への感謝を形にした最高の一撃だった。 前半はなかなかチャンスが巡ってこなかった。高校最後となる選手権の初戦。寒川高(香川)との一戦は少しずつ札幌大谷がゲームリズムを引き寄せたものの、前線で構える真浦に良い形でボールは入ってこない。得意のロングスローで会場を沸かせる場面はあったが、シュートを放つことなく最初の40分間が経過する。 後半13分。その時はやってくる。MF曽我部修羽(3年)、MF松本陽翔(3年)とボールが周り、左サイドバックのDF瀬山晴也(3年)が中央を窺うと、2人のイメージは一瞬で共有される。 「自分より前にディフェンスの選手がいたんですけど、その人より前に入ったら、相手は触れないと思って」ニアへと飛び込み、マーカーの前に潜り込む。既にゴールキーパーの位置も確認済み。シュートコースも、もう頭の中には完璧に思い描いていた。 「キーパーもクロスを警戒して中にいたので、ファーががら空きになっていて、あとは『そこに流せればいいな』という感じで流したら、良いところに飛んでいきましたね」。真浦が頭でコースを変えたボールは、右スミのゴールネットへ綺麗に吸い込まれる。 自身にとっても全国大会での貴重な初ゴールは、今まで支えてきてくれた家族への恩返しの側面もとにかく強かったという。「家族にはなかなか感謝を伝えてこれなかったですし、親も『選手権は夢の舞台だった』と言ってくれているので、今まで支えてくれた家族への恩返しも含めて、こういうところでゴールを決められて親孝行になったのかなと思います」。 真浦は1点をリードしていた後半39分に交代で下がると、チームはアディショナルタイムにまさかの同点ゴールを献上。激闘のPK戦はベンチから見守っていた。 「『PK戦だったら負けない』という自信はチームとしてあって、絶対にみんな決めてくれるし、キーパーの高路地(琉葦)も止めてくれると信じていたので、安心して見れたんですけど、やっぱり長く感じましたし、2回も自分たちが外して、もう決められたら終わりというシーンがあった中で、最後に勝ち切れたというのは本当に大きなことだと思います」。12-11という凄まじいスコアのPK戦を制すると、真浦の表情にも大きな笑顔が広がった。 この夏のインターハイ2回戦。札幌大谷はプレミアリーグEAST所属の強豪・市立船橋高と対峙したが、ビハインドを追い掛ける得点が必要な展開の中で、ベンチスタートだった真浦には最後まで出場機会が回ってこなかった。 「自分も試合に出たい気持ちはありましたし、出られなかったのは悔しかったですけど、その時はメンタルの部分で、『今自分が出てもチームの迷惑になっちゃうかな』という部分もあったんですよね……」。試合に出られなかったことはもちろんだが、フォワードとして自信を持ち切れない自分に対しても、悔しさがあったという。 改めて気持ちのスイッチを押してくれたのは、真浦同様にインターハイではスタメンを外れていたチームメイトだった。 「チームメイトの森詩音(DF、3年)がケガから復帰したタイミングで、『お互い一緒に頑張ろう』と声を掛けてくれたので、詩音の支えがあったことで、そこからもう1回スイッチを入れられましたし、『絶対に詩音と一緒に選手権に行って、良い景色を見れたらいいな』という想いで練習してきました」。 この日の2人はそろってスタメンのピッチを踏みしめ、真浦は得点まで記録。努力の継続が結果に繋がったことについて、「今日のゴールは今後の人生においても、努力してきたことが報われるということを、結果で見せられるゴールだったなと思います」とストライカーは笑顔を浮かべながら口にした。 2回戦で向かい合うのは、プレミアリーグ王者であり、優勝候補筆頭とも称されている大津高(熊本)。相手にとって不足はない。ただただ今の自分にできることを100パーセントでぶつけるだけだ。 「大津さんは優勝候補と言われていて、苦しい戦いになるのは目に見えていますけど、よりこのチームで長く試合をして、最後に良い思い出を作れたらいいなと思っているので、そこに結果で貢献したいですね。大津さん相手にもゴールを決められるように頑張っていきたいです」。 弱気な自分は、夏のあの日に置いてきた。このポジションを任されているのであれば、目指すのはもうゴール一択。アグレッシブさを取り戻した真浦の得点感覚が、ジャイアントキリングを虎視眈々と狙う札幌大谷にとって、極めて大事な武器であることに疑いの余地はない。 高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチおめでとう!アディダスはサッカーに打ち込むすべての部活生を応援しています。 (取材・文 土屋雅史)