習近平の独裁で河川は汚染、幹部は「寝そべり」…こんな中国に誰がした⁉
環境保護の実態はほとんど報じない中国のテレビ
県政府は、一応調査チームを設け、関係する幹部数人が免職となった。しかし、「免職されたとはいえ、どうせ引き続き公務員として仕事を続けるから意味がない」という不満も漏れている。 事件が暴かれた後、中央テレビが報じたぐらいだから、政府系マスコミは一斉に批判したが、そこにも問題がある。茅台酒と比べたことに焦点をあて、肝心の汚染の酷さや原因は無視したのだ。つまり、国の環境保護政策にまで批判が広がることを防いでいる。中央政府のいつものやり方だ。 中国のテレビは、常に環境保護の宣伝を放送しているが、環境保護の実態はほとんど報じない。中国で環境保護は、単なるスローガンに過ぎない。 この事件では、中国の幹部によくあるもう一つの姿勢が露わになった。中国中央テレビが河川の汚染状況を追う過程で、全椒県水利局の共産党党委員会のメンバー、楊俊(よう・しゅん)氏にも取材した。すると楊氏は、「実を言うと、私はあと2ヵ月で定年になるから、もう(汚染)問題には関わらない」と述べた。 この発言も問題になった。 国家行政学院の竹立家(ちく・りつか)教授は、こう述べた。 「一部の幹部たちの仕事に対する姿勢が明らかになった。要するに、『寝そべり族幹部』だ。(中略)たとえ明日定年になるにしても、今日はまだ仕事中だ。最後の日までしっかりと仕事をすべきでないか。幹部は(自分が保持している)権力に対して、畏敬の精神を持たなければならない。そうでなければ、結局、不作為あるいは『乱作為』(勝手な行為)に陥る」
自主性を失う幹部たち
習近平主席は、指導者になって以降、すべての権力を自分一人に集中させ、何でもかんでも自分が指導する体制を築いた。その結果、幹部たちは自主性を失い、習主席の指示に従うしかなくなった。 何かを積極的に成し遂げる人よりも、何もしないで指示を待って、それに唯々諾々と従う人が評価される世の中になった。それで「寝そべり族幹部」が蔓延しているのだ。この言葉は流行語にもなっている。 もはや地方自治体は悲惨な状況だ。中国政府が公表したデータから、1月から4月までの全国31の地域の財政状況を、シンクタンクの「全産業鏈研究」が公表した(『新浪網』5月31日)。すると、全国31地域で、財政黒字は上海市だけだった。他の地域はすべて、中央政府の補助に頼っているのだ。 財政の自給率が一番低いのはチベット自治区で、わずか10.98%だった。かつて豊かな地域と言われた浙江省も、財政赤字に転落した。北京市さえ財政の23.46%を、中央政府の補助で賄っている。 5月29日、中国政府が初めて発行した「超長期型特別国債」の取引が始まった。超長期型というのは、満期が20年、30年、50年の国債のことだ。総額400億元(約8800億円)と大規模だ。「買ってから50年間も生きられるのか」と揶揄(やゆ)された代物だ。 習近平主席は認めたくないだろうが、(昨年3月に)無理して3期目を続投したが、経済はお先真っ暗だ。おまけに「寝そべり幹部」たちは、汚染や赤字を垂れ流している――。
林 愛華