【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】貴公子 翻弄する男、味方か敵か
病気の母と2人暮らしの貧しい青年マルコは、地下格闘で日銭を稼ぐ日々を送っていた。ある日、マルコが大富豪の非嫡出子だという事実が発覚。途端に彼は、方々から命を狙われることになる。 【写真】大﨑実行委員長、別形態のエンタメ開催に意欲 「沖縄国際映画祭」今年で終了 実行委も解散へ 物語の筋だけを並べると主人公は明らかにマルコなのだが、不思議なことに、映画の中で光を放つのは別の男。マルコを付け狙う妖しく美しいその男は、激しい暴力性と破壊力を見せつける半面、妖しいほほ笑みで観客を含む全ての人間ををけむに巻き、翻弄(ほんろう)する。 彼はマルコの味方なのか敵なのか。そんな物語の中核が、次第にどうでもよくなり、気付けば、狂気に満ちた瞳に吸い込まれ、身動きが取れず、何をされるのか分からない状況に、どっぷり身をささげていた。好きにしてください。ほほ笑みと共に向けられた銃口が、私に向かって火を噴くことを想像し、今夜も眠れない。(桜坂劇場・下地久美子) ◇同劇場で上映中