原作誕生から100年、オリジナル脚本で映画化 谷崎潤一郎の小説を映画脚本にする男の物語 「痴人の愛」11月29日公開 予告&場面写真
世界的名匠・増村保造ら多くの映画人が挑んできた谷崎潤一郎の名作に、谷崎作品「卍」を2023年に新解釈で映画化し話題を集めた監督・脚本家の井土紀州が新たに挑戦する映画「痴人の愛」が、11月29日に公開される。ポスタービジュアル、予告編、場面写真、監督&キャスト陣コメントが披露された。 「卍」で長編映画デビューした脚本家・小谷香織との再タッグで、原作誕生から100年の記念すベき本年、《物語る者》として映画制作を志す者の青春、創作と恋人との間でもがき苦しむ男の悲哀を織り交ぜた唯一無二の「痴人の愛」を生み出した。 小説「痴人の愛」の映画化脚本の執筆を試みる主人公・河合譲治役は、「赤目四十八瀧心中未遂」「キャタピラー」などの大西信満。そして譲治の《運命の女》ことヒロイン・ナオミ役を、奈月セナが演じる。共演にはNHK連続テレビ小説「虎に翼」での男装の女性役で注目された土居志央梨、大林宣彦作品やゴジラシリーズなど多彩な出演歴を誇るベテラン・村田雄浩、日本映画界に不可欠なバイプレーヤー・川瀬陽太のほか、吉岡睦雄、中島ひろ子、芳本美代子など豪華な顔ぶれが揃った。 ポスタービジュアルでは、しがみつくようにナオミの胸に抱かれる主人公・河合譲治と、原作小説で描かれた蠱惑的で奔放な女性像ともまた異なる、慈愛の表情をたたえたナオミの姿が。また予告編と場面写真でも、「小説「痴人の愛」の映画化脚本の執筆を試みる男の物語」というこれまでの映画化とは異なる本作の物語が垣間見える。11月29日から池袋シネマ・ロサほかで全国順次公開。 <コメント> ■大西信満(河合譲治役) 移ろいが激しい世の中で、原作が書かれてから100年の年月を経ても変わらない何かを探りながら撮影していたような気がします。 当時とはまた違う現代の窮屈さの中、無意識に身に纏った枷のようなものを嫌というほど感じながら、自分自身を解き放つ作業でした。 どうかこの作品が一人でも多くの方に届きますように。 ■奈月セナ(ナオミ役) 最初にお話を頂いた時は沢山の原作ファンがいるこの作品の世界観を守りながらナオミをどう表現したらよいのか考え、監督とご相談させていただきながら令和版ナオミを演じさせて頂きました。 ナオミに対してみなさま色んな解釈をお持ちだと思いますが、素直で執着を持たない自由な彼女の生き方に現代を頑固に生きていた私自身はとても支えられていました。役を演じることの醍醐味を初めて感じた作品でもあります。 どうか皆様には譲治さんとナオミの関係を覗いてそして見守って頂けると幸いです。 ■井土紀州(監督) 「痴人の愛」を映画化するという話が持ち上がって以来、ずっと僕の心をとらえて離さなかった問題。 それは、ナオミという女がどんな姿をしているのかということでした。 脚本家とシナリオを作りながらも、そのことを考えると悶々とした気持ちになる毎日。 ところが、奈月セナが目の前に現れると、僕の煩悶は一瞬にして吹き飛びました。 たぐいまれな容姿に艶のある声、そして謎めいた雰囲気。 彼女は目の前にいるはずなのに、本当は存在しない夢の女のようでした。 撮影が始まると、被写体としての奈月セナの存在感は抜群で、ナオミというヒロインを見事に体現していました。 映画がクランクアップし、彼女と会うこともなくなった今、僕は思うのです。 彼女は現実には存在せず、夢の中やスクリーンの中だけに生息するマボロシだったのではないかと。 <あらすじ> かつてシナリオコンクールで受賞したものの、未だプロデビューを果たせずにいる脚本家志望の男・河合譲治(大西信満)。 ある日、同じシナリオ講座に通う若者たちと入った寂れたバーで、譲治はナオミ(奈月セナ)と名乗る美しい女性と出会う。店で働きながら俳優を目指しているという彼女に「シナリオ講座の講師」と勘違いされた譲治は苦笑しながらも、自身の身の上を明かす。 やがて譲治は、シナリオ講座の講師・椿(村田雄浩)に「自分の代わりに映画の脚本を書いてみないか」と誘われる。原作は、谷崎潤一郎の「痴人の愛」……譲治は二つ返事で依頼を引き受け、今度こそ成功してみせると脚本を書き始める。 脚本執筆に苦戦する中で、譲治はナオミと再会し、二人の関係は急速に近づいていく。しかしそれが、ナオミと執筆との間で身を引き裂かれる、甘く、苦く、狂おしい時間の始まりだった……。