映画「ドリーム・シナリオ」の見どころを紹介!ニコラス・ケイジ演じる平凡な男が夢に現れる…それは恐怖の始まりだった
2024年11月22日より全国公開された映画「ドリーム・シナリオ」。ヒット作を次々と生み出している気鋭のスタジオA24と、「ミッドサマー」「ヘレディタリー/継承」などを手がけた鬼才アリ・アスターがタッグを組み、主演に名優ニコラス・ケイジを迎えて製作された禁断の“ドリーム・スリラー”を描いた本作。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。 【写真】現実と夢の中のポールが別人に見えてしまうニコラス・ケイジの演技力はさすがの一言! 【ストーリー】 ごく普通の暮らしをしている大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。平々凡々とした日常を過ごしていたが、ある日、何百万という人々の夢の中に一斉にポールが現れ、一躍有名人に。ポールはメディアの注目を集め取材を受けながら得意げになっていく。 夢だった本の出版まで持ちかけられ、天にも昇る気持ちだったポールだが、夢のような日々は突然終わりを告げる。なんと、夢の中のポールがさまざまな悪事を働くようになり、現実世界で大炎上。コントロールの効かない夢の中のポールは人々のトラウマの対象となってしまう。 ポールは一気に嫌われ者となり、悪夢のような日常が始まる。大学では悪夢の中でポールを見た学生たちが授業をボイコットし、道ゆく人々からは嫌がらせを受け、家族にまで危害が及ぶようになったポールは行き場を失っていく。 果たして、夢の中のもうひとりのポールの目的とは!?何もしていないのに人気絶頂を迎え、何もしていないのに大炎上したポールの運命はどうなってしまうのか…? ■ニコラス・ケイジが挑んだのは、多くの人の夢に現れて有名になる平凡な男 ニコラス・ケイジは、映画「リービング・ラスベガス」で第68回アカデミー賞の主演男優賞を受賞した名優。「ザ・ロック」「コン・エアー」「フェイス/オフ」などの大ヒット作でキャリアを築いたあと、悪徳警官を演じた「バッド・ルーテナント」やヒット・ガールの父親役を演じた「キック・アス」、近年はベルギーのアクション映画「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」やSFホラー映画「カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-」、溺愛するブタを奪還するべく戦う男を演じた「PIG/ピッグ」、自分自身を演じた「マッシブ・タレント」など、ユニークな作品選びでファンを喜ばせてきた。 ぶっ飛んだ役を嬉々として演じる彼を見ると、“楽しそうだな…”と思いニヤニヤしてしまうし、次にどんな作品を選ぶのか興味深かった。そんなニコラスが「ドリーム・シナリオ」で挑んだのは、平凡な大学教授から一転して有名人になり、調子に乗ってきたところで地獄に突き落とされるかわいそうな男である。 ちなみに本作の監督はアリ・アスターではなく、ノルウェーのオスロ出身のクリストファー・ボルグリ。クリストファー監督が承認欲求に取り憑かれた女性の物語を描いた「シック・オブ・マイセルフ」もぜひチェックしてほしい。 ニコラス演じるポールは家族のことを大事にし、自分が勤める大学の生徒たちを常に気にかけている教授であり、平凡で冴えない男。そんなポールがある日、街で知らない人からジロジロと見られ、声をかけられるようになっていく。その理由は、あらゆる人の夢に中にポールが出てきたからだ。何百万人という信じられない人数の夢の中に登場したポールは、何もしていないのに一躍有名人になってしまう。もしも自分の夢にニコラスが出てきたらめちゃくちゃうれしいが、冴えないポールだったら申し訳ないけれど一回限りにしてもらいたい…いや、紳士的ないい人なんですけどね…。 ■凡人と悪人のキャラクターを演じ分けるニコラスの演技はさすが 有名人になったポールは若くて美しい女性から声をかけられて舞い上がったり、夢だった本の出版まで持ちかけられたりするのだが、そんな幸せな日々は長くは続くはずがなく…。ここからポールにとって非常につらい展開になっていきます。 ――え!窓の外からじっと見つめてくるポールめっちゃ怖いんだけど!! なぜか夢の中のポールは人に暴力を振るったり追い詰めて殺したり、あらゆる悪事を働くようになっていく。現実のポールは何も悪いことをしていないのに、生徒たちからは嫌われ、道ゆく人々からは嫌がらせを受け、大学にも行きづらくなるというかわいそうなことに…。でも、確かに知っている人物に夢の中で残忍な方法で殺されたらトラウマになるのはわかるし、しばらくその人の顔は怖くて見られないかもしれない。ましてや毎日のように顔を合わせる関係性の人だったら最悪だ。 ポールは常に不安そうな表情で怯えながら過ごすようになってしまう(こんなオドオドしたニコラス・ケイジは今までに見たことがない!)。どうしてこんなことになったのか?夢の中のポールは何がしたいのか?先が全く読めないまま、ひたすらかわいそうなポールの物語が展開していくところが本作のおもしろいところ。 驚くのは、現実のポールと夢の中のポールが別人のように見えるということ。凡人と悪人をしっかりと演じ分けたニコラスのさすがの演技に唸らずにはいられない。 余談だが、夢の中の殺人鬼といえば「エルム街の悪夢」のフレディを思い出す人も多いだろう。「ドリーム・シナリオ」では、自身の著書のカバー撮影で、フレディがつけていた鉄の鉤爪と似たようなものを装着させられるポールの姿に思わず笑ってしまった。 ポールの運命は一体どうなるのか。ぜひ劇場でチェックしてみてください! 文=奥村百恵 (C) 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED