竹内涼真の走りにも注目 池井戸お約束パターンも家族で応援したい『陸王』
15日に放送された役所広司主演『陸王』(TBS系)は、池井戸作品として期待を裏切らない面白さで盤石なスタートを切った。老舗の足袋製造業者「こはぜ屋」が業績低迷から新規事業としてランニングシューズ開発に挑む。初回2時間スペシャルは見応え十分。実はテレビドラマは拙宅で家族と観て、ああだこうだと議論することにしているのだが、性別世代も異なる幅広い層に受ける池井戸作品だけあって、『陸王』に関しては80歳近い叔父含め全員それぞれに満足してしまった次第。うまく感動へ誘うドラマティックな展開と、それぞれの世代に受ける役者が揃っているのが大きいのだろう。
ランナーにふさわしい体型に仕上げた竹内涼真の走りにも注目
足袋のノウハウを活かしたランニングシューズ。池井戸潤氏は実在するメーカーへの取材を重ねて物語の骨格を作り上げたようだが、ドラマでも原作同様、舞台となる土地は行田足袋で知られる埼玉県行田市。約300年前、江戸から足袋製法が伝えられ当時の忍藩主により足袋製造が武士やその家族の仕事として奨励されたのだとか。 公式ホームページには新たなマラソンロケのボランティア募集要項が載っているが、多数のエキストラを集めてのマラソンシーンは圧巻。そのマラソンを走る食品メーカーの陸上競技部員・茂木裕人役、竹内涼真のたたずまいがいい。前クールでは『過保護のカホコ』でヒロインの彼氏役を務めたが、今回も物語のキーパーソンの一人。竹内は185センチと画面でもわかるほどスラリとした長身だが、2002年のシカゴで日本男子のマラソン選手としてはいまだ破られていない最高記録を出した高岡寿成氏も186センチと長身だった。竹内は今回、約10キロもの減量をして長距離走者にふさわしい体型に仕上げてきたというからプロ意識の高さを感じる。サッカー経験者だけに、走りに説得力もある。 試行錯誤を繰り返しランニングシューズ「陸王」開発に命運をかけるこはぜ屋だが、その成否を左右するのが有名選手の使用実績。第1話では、紆余曲折、ようやくシューズが竹内演じる茂木選手の手に渡ったところで物語が終わっているので、今後そのキーパーソンぶりが発揮されてきそうだ。 苦境に立たされた主人公たちが、ドン底を這い回るような艱難辛苦を経て奇跡的な逆転劇へ辿り着く、池井戸作品のそんなお約束なパターンを予感しながらも毎週かぶりつきで観てしまう。別の言葉で言い換えればマンネリともいえてしまうわけだが、マンネリでつまらないドラマには「予感」からくるワクワク感がない。「陸王」には、演技達者な役者の演技や手間暇かけた演出と相まって、その「予感」がある。それこそが定番パターンを踏むドラマの大きな魅力でもあるように思う。 次も観たい度 ★★★★★ (文:志和浩司)