〈大手〉だとコスト高、〈地元密着型〉だと倒産リスクも…不動産投資家を悩ます「管理会社選び」の最適解【専門家が解説】
不動産投資において死活問題ともいえる「管理会社選び」。大手ならよくて、小さいとダメなのかというと、必ずしもそうではないと、不動産投資歴15年、家賃収入3億円超えの実績を誇る名取幸二氏と、一般社団法人マネー総合研究所所長の杉田卓哉氏はいいます。名取氏と杉田氏の共著書『不動産投資 絶対にやってはいけない39の落とし穴』より、管理会社を選ぶ際に、大切な考え方を見ていきましょう。 【第26回】 都道府県「3LDKマンション家賃」ランキング…<小売物価統計調査(動向編)(2021年平均)
個人的には地元密着の老舗不動産屋がオススメだが…
賃貸管理会社の管理戸数ランキングは「全国賃貸住宅新聞」が毎年発表しています。[図表1]をご覧ください。テレビCMを流しているような誰もが知っている大手の管理会社が並んでいます。 つい大手なら安心と思い込んでしまう人も多いのですが、「大手ならよくて、小さいとダメなのか」というと必ずしもそうではありません。 もちろん、大手はしっかりとした教育システムがあったり、接客もしっかりしていたりと、きちんとした会社が大多数です。ただし、問題もあります。たとえば大手ほど縦割りの会社組織で離職率が高く、担当者がすぐに代わってしまうケースも少なくありません。 縦割りというのは、入居募集の部門と修繕など建物管理の部門、契約の部門に分かれていて、それぞれの連携がとれておらず、バラバラに一日何度も連絡がくるようなことがあります。また大手といってもフランチャイズで、実際には地元の小規模な管理会社だったというケースもあります。 もちろん、地元の小規模な管理会社が悪いとは限りません。個人的には地元密着の老舗不動産屋さんはオススメです。「俺がこの街の賃貸物件を管理しているからまかせておけ!」くらいの強者もいます。 大手管理会社が運営する物件のリフォーム費用などは、固定費が高額化するケースもあります。これは大手管理会社が高品質なリフォームや設備を提供することにより、コスト高になってしまうからです。
よい「賃貸経営」をするために考慮したいこと
一方、地元の小規模管理会社は、大手にはできないようなことを柔軟に対応してくれたり、大手にはないスキルがあったりします。加えて大手管理会社から独立して、自分の管理会社を経営している凄腕の経営者も大勢います。 私が過去に依頼していた管理会社の社長はとても頼りになりました。 現在は、家賃滞納の取り立てを保証会社で肩代わりするケースが増えましたが、その社長はご自身で家賃回収の督促をしてくれます。 私が「社長さん自ら大変ですね」と声をかけると、「いやいや、腕が落ちますんで、これがわれわれの仕事ですから!」と心強い返事がきたものです。 このようにポリシーをもって運営している管理会社は、闇雲にAD(広告料)を増やさない、高額な費用を取らないケースもあります。「それは管理料の中にすべて入っていますから」という管理会社の店長もいました。 経営基盤がぜい弱な管理会社の注意点 ただ、小さな会社は大手に比べて経営基盤がぜい弱になる傾向にあり、倒産の可能性が高まります。以前、私自身も危ない目に遭いました。管理をお願いしたときはとてもよい管理会社でしたが、ある月から家賃の支払いが遅れはじめたのです。 毎月20日に私の口座へ家賃を振り込んでもらうはずが、22日になり、23日になり、25日を過ぎ……だんだんと遅れて、連絡もつきにくくなりました。 「これはマズイ!」と感じて、すぐに他の管理会社へ変更しました。変更前の管理会社はその1年後に倒産してしまい、オーナーには家賃収入の一部が戻ってこなかったといいます。 こうした例は稀だと信じたいですが、必ずしも大手だけがいいわけではなく、しっかりと管理会社を精査して選択すべきです。 管理会社としてのスキルはもちろん、ポリシーとプライドをもって仕事をしている、そんな方とパートナーを組むことができたら、本当によい賃貸経営ができるでしょう。 名取 幸二 株式会社ペスカトーレ 代表取締役 杉田 卓哉 一般社団法人マネー総合研究所 所長
名取 幸二,杉田 卓哉