新聞用紙を1日に760トン生産できる巨大な抄紙機「N2」（9日、熊本県八代市で）＝長野浩一撮影

　日本製紙の八代工場（熊本県八代市）では新聞用紙やコピー用紙など、様々な紙を生産している。同社にとって九州唯一の拠点で、今月、操業開始から100年を迎えた。歴史ある老舗工場を小田哲朗・総務課長（41）に案内してもらった。 【動画】古紙から新聞用紙へ、時速100キロの紙づくり…熊本・日本製紙八代工場

　球磨川近くのJR八代駅の北側に位置し、大正時代の1924年、日本製紙の前身の一つ「九州製紙」の本社工場として開業した。現在の敷地面積は東京ドーム7個分の約33万平方メートルに及び、煙突から立ち上る白い水蒸気は、八代市を象徴する光景の一つだ。生産能力は年50万トンで、日本製紙全体の9％を占める。主な品目は新聞用紙が約5割、コピー用紙が約3割だ。

　工場ではまず、国内外から仕入れた木材チップと、九州各地から集められる古紙を熱や薬品で溶かし、インクなどの不純物を取り除く。できあがるのは繊維が溶け込んだ液体状の「パルプ」で、様々な紙の原料となる。

　紙に加工するのが「抄紙機」と呼ばれる機械だ。長さ数十メートルの巨大な装置で、八代工場では現在、4台が稼働する。まず、パルプを目の細かい網の上に噴射して、薄い平面状にする。コンベヤーで運びながら熱風で乾燥させ、ローラーで圧をかけて薄く、均一に整えて仕上げる。最後はドラム状に巻き取り、新聞用紙は、そのまま九州内の新聞工場に送る。コピー用紙は所定の大きさに裁断して出荷する。

　抄紙機のうち小田さんが、「今でも国内最先端の能力」と胸を張るのが98年に導入された新聞用紙用の「N2」だ。機械内の紙の移動速度は最大で時速約100キロに達し、大量生産に貢献してきた。八代工場の新聞用紙の市場占有率（シェア）は九州の約7割に達するという。

　ただ、電子化などで紙の需要は全体的に減少傾向にある。N2は、来年6月頃に停止し、トイレットペーパーなどの生産設備を新たに導入する方針だ。新聞用紙は別の機材で生産を続ける。小田さんは「これからも八代の地で紙を作り続けていく」と力を込めた。