TKOで悲願の世界王者となった岩田（撮影・佐藤徳昭）

プロボクシング・8大タイトル戦（13日、東京有明アリーナ）2日間にわたる国内史上最大級の興行が開幕。WBO世界ライトフライ級王座決定戦で岩田翔吉（28）＝帝拳＝が3回TKO勝ち。早大出身選手初の世界王者となった。WBA世界バンタム級は挑戦者の堤聖也（28）＝角海老宝石＝が王者・井上拓真（28）＝大橋＝との〝同級生対決〟を3―0の判定で制し新王者に。井上拓は3度目の防衛に失敗した。WBC世界フライ級王座決定戦で寺地拳四朗（32）＝BMB＝が11回TKO勝ちし、ライトフライ級との2階級制覇。WBA世界フライ級王者のユーリ阿久井政悟（29）＝倉敷守安＝は2－1の判定勝ちで2度目の防衛に成功した。【観衆＝9500人】 鮮烈なTKO勝利が決まると、岩田は赤コーナーに駆け上がった。大舞台でプロ初黒星を喫した2年前からの成長を示し、大歓声を浴びた。 「2年前にすごく悔しい思いをした。腰に世界のベルトを巻けてすごくうれしい」 3回に右アッパーでダウンを奪い、さらにラウンド終了のゴングと同時に左フックが炸裂（さくれつ）。相手をキャンバスに沈め、レフェリーがノーカウントで試合を止めた。 一昨年にWBO王者を相手に世界初挑戦し、判定負け。練習を見直し、駆け引きや組み立てを強化してきた。敗戦後はノンタイトル戦4試合でオールKO勝ち。満を持しての世界再挑戦だった。 井上拓真、田中恒成らと同じ1995年度生まれの「花の95年組」。東京・日出高3年時には井上拓、田中を倒して全国高校総体で優勝した経験もある。ただ、すぐにプロ転向はせず、早大でスポーツ心理学などを学びながらボクシング部で活動。世界を目指すには遠回りとみられることもあったが、あの頃があるから今がある。 早大出身者は岩田を含め過去に4人、計6度世界に挑戦したが、すべて敗戦。「早大ボクシング部は強くない。歴史に名を刻みたかった」。OBの大一番に、早大は世界初挑戦時と同様にトランクススポンサーになって後押し。早大競技スポーツセンターのロゴマークに「WASEDA」の文字が入ったワッペンをつけて闘った。 「勝てなければ最後」と進退をかけた一戦を制し、リング上では「盛り上がるカード」と12日にIBF王座に返り咲いた矢吹正道（32）＝LUSH緑＝との統一戦を希望した。ファッションとヒップホップが大好きなおしゃれ番長。帝拳ジムには初めてのWBO王座をもたらし、王者の系譜をつないだ。（尾﨑陽介）