台湾現地ルポ・立法院占拠24時 第1回 平和な占拠
台湾の大学生らによる「ひまわり運動」が収束の気配を見せている。立法院長・王金平氏は4月6日、協定の監督法案が成立するまでは協定に関する与野党協議を招集しないとした談話を発表した。学生らは王院長の談話を受け、7日夜に会見。10日に立法院から退去すると表明した。三週間も続いた一連の抗議活動は一定の成果を挙げ、今後の政権運営にも多大な影響を与えるとされる。近年まれに見る大規模な学生運動となった「ひまわり運動」とはいったい何だったのか。現地での取材をもとに振り返る。(文・写真 / 河野嘉誠) ----------
3月27日・台北。沖縄よりもさらに南方に位置する台湾は、すでに初夏のような陽気だった。 台湾の大学生らは3月18日以降、台湾と中国の間で昨年締結された「サービス貿易協定(服務協定)」の撤回を求め、台湾の国会に相当する立法院を24時間体制で占拠を続けていた。 リーダーの1人・林飛帆は、国立台湾大学政治学研究所に在籍する25歳だという。自分と同じ年くらいの若者がこの政治運動を動かしているのか── 途方に暮れる気持ちになりながら、私は桃園空港から台北駅へと向かうバスに揺られていた。 午後8時。バスが台北駅に到着すると、私はすぐさまその足で立法院へと向かった。車中のテレビで見たニュース映像では、デモ隊と警察隊の衝突の映像が流れていた。私はやや緊張した面持ちで歩みをすすめていた。
台北駅から歩いて10分ほどで、私は立法院の周辺に到着した。だが、目の前の景色には、私が予想していた暴力的な雰囲気などどこにもなかった。 立法院前の青島東路は、まるで縁日のような賑やかさだ。政治的な主張を背負った旗が風になびき、あたりはネオンライトで鮮やかに照らし出されている。 若者たちの表情も明るい。参加者の顔ぶれをみても、ほとんどがごく普通の大学生といった様子だ。 青島東路のなかに入ると、演説がおこなわれていた。弁士の前には、人々が長蛇の列をなして演説に耳を傾けている。ここだけで300人はいるのではないだろうか。路上に敷かれた段ボールや御座の上に座っている若者も多い。 立法院へと続くこの道には多くのスクリーンが設置されており、なかには占拠が続く立法院内部の様子を映しているものもあった。 立法院にさらに近づく。路上には様々なメッセージが掲げられていた。街頭ではいたるところで演説がおこなわれ、聴衆がぞれぞれに耳を傾けている。 この日の段階で、立法院の敷地内には誰でも入れるようになっていた。私も入り口に立つ案内役に誘導され、敷地の中へと入った。立法院の玄関前にいる学生たちに「我是日本人(私は日本人です)」というと、熱心に歓迎してくれた。 (続く)