死してなお鞭打たれるトルコのクルド人 破壊された墓前で残された者たちは
シズレ封鎖中に殺された人々の新しい墓地が、小高い丘の中腹につくられていた。既存の墓地にはあらたに犠牲となった200人以上を葬るスペースが残っていなかったのだ。 少女を連れた女性が、墓石の横に腰をおろしていた。 墓石にはカシムという名が記されている。彼女の夫か息子なのだろう。墓に向かってなにやら話しかけながら、時折目頭を押さえてすすり泣いていた。
虐殺から数カ月が経つというのに、未だ身元が分からない遺体の墓石には番号だけが記されている。以前からあった墓地を訪れると、砕かれた墓石が散乱していた。数年前に埋葬されたPKKのメンバー達のものだ。治安部隊の兵士たちがやってきて、壊していったという。住人たちへの無差別の殺戮のみならず、文字通り「死者に鞭打つ」心なき行為だった。 (2016年6月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォト・ジャーナル<トルコ~クルド人の悲劇>」の一部を抜粋したものです。