絶望の30点差の後に射した希望、『BE BRAVE』を体現した川崎のトーマス・ウィンブッシュ「あきらめないのが僕の強み」
うまくいかない時期に背中を押された存在
アグレッシブなプレーや情熱的な振る舞いを見ていると意外にも感じるが、キャプテンの篠山竜青いわく、ウィンブッシュは気を遣う性格で、周りからの指摘でプレーを自重してしまう傾向があるという。 今シーズンより川崎に加入したウィンブッシュは、シーズン序盤から高い身体能力を生かしたアタックなどハイパフォーマンスを見せ、高い期待を集めていた。ところが前述のような性格やケガが重なり、プレータイムが減ったり、持ち味を発揮できない時期も過ごした。 この時期のことについて尋ねると、ウィンブッシュは「(プレータイムが減ったのは)ケガが少しあったので、コーチは僕のことを守ろうとしていただけだと思う」と言った後に、支えられた存在について明かした。「ジーノ(篠山)がリーダーとして助けてくれた。『しっかりアタックし続けろ』っていつも言ってくれているので、すごく感謝しているし、そのメンタリティをキープしてアタックし続けている。今日も『打ち続けろ、ディフェンスし続けろ、アタックし続けろ』、『チームのためにやり続けて、ファイトし続けてくれ』と言われていた」 このシリーズを終えて川崎は26勝24敗。中地区5位、ワイルドカード7位に落ち込み、CS進出に向けていよいよ後がなくなった。攻守の要である藤井祐眞がコンディションの不調から精細を欠く今、ウィンブッシュの活躍、そして彼を生かすオフェンスの構築はこれまで以上に重要になってくるだろう。 「厳しい状況ではあると思う。シーズンを通してすごいアップダウンが激しいし、勝たなきゃいけない。だけど、できることはチームとして一つにまとまって、毎試合自分たちのベストを尽くすことだけ。本当の終わりが来るまで終わりではないと思うので、頭を上げて、ここから先も一つひとつしっかりやっていくしかないと思う」 敗戦という事実はもちろん消せない。しかし、自分にできることに全力を傾け、勇猛に戦い続けたウィンブッシュの奮闘が、自らを見失っているチームに良いケミストリーを与えたと願いたい。
青木美帆