『虎に翼』松山ケンイチの一言が伊藤沙莉の未来を変える? “共亜事件”の全裁判が終了
寅子(伊藤沙莉)の言動に感情を揺り動かされる桂場(松山ケンイチ)
思ってもみない質問に、呆気に取られた表情の寅子へ桂場は続ける。「君、その考え方は非常に……あぁ、そうかご婦人は裁判官にはなれなかったね」と。この後に続く高等試験の受験の確認は寅子たちが法学部最終学年になることをそれとなく示す、第6週への橋渡しとも言えるセリフだが、先述した桂場の言葉は寅子の未来を大きく変える一言となっていく。 第1週での「私も女子部進学には反対だ」というセリフを例に、竹もとでは寅子にとって思いがけない答えが桂場から返ってくる。桂場はしたたかであり、どこか腹の底が読めない。竹もとを出た後に見せる小さな笑みは、まるで女性が裁判官になる未来への布石を打ったかのような、そんな表情にも思えてくるが、寅子が法律自体が守るものだと話している時に、桂場は持っていた湯呑みを口のそばまで運ぶが手を止め、その湯呑みをちゃぶ台に戻す。じっと寅子の話を聞き、前傾姿勢で「君は裁判官になりたいのか?」と問いかけるその眼差しは、何事にも左右されない桂場が寅子の言動に感情を揺り動かされているようにも思えてくる。 「ご婦人は裁判官にはなれなかったね」の後につぶやく「はて?」の続きは、これから寅子が切り拓いていく地獄の道だ。今はとりあえず、竹もとで杏を頬張り満面の笑みを浮かべる寅子に、筆者からも「おめでとう」と言いたい。
渡辺彰浩