「103万円超で働き損」は誤解 年収の壁、トリガー解除…自民、国民に譲歩の公算も課題
自民党と国民民主党の政策連携では、年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」の解消と、ガソリン税の一部を軽減するトリガー条項の凍結解除という国民民主の目玉政策に対し、自民がどう対応するかが焦点だ。自民は国会での多数派工作のため国民民主に譲歩する公算が大きいが、それぞれの政策には課題もある。 【図で解説】社会保険にかかわる「年収の壁」 ■労働供給増目指す 「恒久的な措置としてぜひやっていきたい」。国民民主の玉木雄一郎代表は3日のフジテレビ番組で、所得税の基礎控除と給与所得控除の合計を103万円から引き上げることに改めて意欲を示した。 所得税は収入から一定額を除いた金額に税率をかける仕組み。納税者全員が対象の基礎控除は48万円、会社などに勤める人の給与所得控除は最低55万円で、計103万円以下なら非課税になる。国民民主は衆院選で、この103万円を178万円に引き上げることを訴え、議席を伸ばした。日本総合研究所の藤本一輝研究員は「今の日本に求められるのは、需要刺激よりも供給力の増加だ。『年収の壁』の解消で労働供給の増加を目指す方向性は正しい」と話す。 ただ、年収が103万円を超えても払う必要がある所得税はわずかだ。収入増の大半は手元に残るため、実質的に「働き損」は起きない。配偶者に関しても配偶者特別控除で年収150万円までは所得税が増えない仕組み。このため、実際に「働き損」が起きるのは、扶養控除の対象となる学生アルバイトの年収が103万円を超えることで扶養者である父母などの所得控除額が減り、世帯としての税負担が増えるケースのみだ。 ■「2つの壁」影響大 年収の壁を巡っては、制度が正しく理解されず一部の労働者が「103万円で働き損が起きる」と誤解していることで、労働時間が抑えられている可能性も指摘される。今回の引き上げを巡る議論でこうした誤解が解消され、労働供給の増加につながることは期待できるが、効果は限定的だ。 むしろ実際の影響が大きいのは、社会保険料の支払いが必要となる106万円と130万円という2つの「壁」。日本総研の西沢和彦理事の試算では、年収が130万円以上となり厚生年金保険と健康保険組合などに新たに加入した場合、可処分所得は約15万円減る。