「脳がスマホで若返る」って本当…?シニアこそスマホを使うべきと「脳神経内科医が勧める」意外な理由
「わからないこと」はスマホ頼りでもOK
「シニアの中には元気な方と、残念ながら老け込んでしまっている患者さんがいます。私はその運命を分けるのはデジタルを使いこなしているかどうかだと考えています」 【図解】これぐらいはさすがに分かる?恥ずかしすぎて絶対人には聞けないスマホ操作用語 こう語るのは脳神経内科医で、『脳はスマホで若返る』(辰巳出版)を上梓した内野勝行氏だ。 スマホでシニアの脳が若返る? どんどんダメになっていくの間違いではないか? そう思ったあなたこそデジタルを、健康寿命への活路として真剣に検討してほしい。内野医師が具体的なスマホ活用術を解説する。 「わからない事をすぐ検索で調べて大丈夫なのか? 大丈夫です。若い方にとっては、何でもすぐに検索で調べるのは、脳の神経経路が作られるのが阻害される悪いことです。これを続けると、アナログで調べる経路を知らずに成長し、脳が調べることを思い浮かべることすらしなくなる。 でもシニアは文献や新聞、雑誌で情報を知る経路が既に染み付いています。だからスマホで調べるのは、新しい回路になる。シニアは知識も経験もあるから、もうそこは楽していいんです。歳をとって物忘れが増えてきがちでも、記憶の取り出しをスマホで助けることで脳が活動的になります。集中力や思考、体力が落ちているのがシニアです。調べる前に忘れてしまうより、すぐ検索すればいいのです」 スマホは難しい。その先入観がシニアをデジタルから遠ざけている。しかし、それも大きな誤解だ。 「昔の家電のようにスマホには説明書なんてものはない。なぜなら直感的に使えるようにデザインされているから。だから、地球人口の実に2人に1人が使っている。それに簡単に壊れたりもしないし、操作を間違っても何回でもトライ可能だから誰にだって使いこなせるんです。 医師として仕事をしていて、スマホと、ガラケーやらくらくホンを使っている人は、明確に認知機能に差を感じます。らくらくホンは簡単すぎて、脳が活発化する刺激に欠けるのです。まずは若者と同じiPhoneなどを使い始めるのがおススメ。無理なく学んで使えるようになることが効果的です。タブレットでもいいんですが、スマホのほうが手軽だからオススメしています。どこでも使いたい時に、すぐ使えるからスマホがいいんです」 ◆〝受け身〟でテレビを見るよりも好きな動画を探そう スマホで利用するべきはもちろん検索だけではない。動画配信サービスなども有効だ。 「テレビは、局が提供するコンテンツを受け身で見ているだけ。動画は、YouTubeなら無料だし、月々わずかなサブスク料金を払うだけの見放題サービスがたくさんあります。その中から見たいものを能動的に選びます。シニアは感情を出す機会が減りがち。お笑いの動画や、感動動画を見て号泣すれば、感情を出せるし自律神経も整い不眠症にも効果があります。 感情は幸せホルモンを出すことにつながります。セロトニン、オキシトシン、ドーパミンなど、報酬系を分泌する回路が脳の内側にはあります。実はシニアはそれらが出にくくなるんです。男性ならテストステロン、女性ならエストロゲンというホルモンが40~50歳を境に2割、3割減ってくる傾向にあり、70歳を過ぎるとドーパミンはかなり出にくくなる。そして出さないと、どんどん感情が乏しくなって、幸せホルモンも出なくなるというわけです。嬉しい、幸せという感情で、それらは分泌されるので、例えば抱きしめられるなどで報酬系が働きます。 でもなかなかそんな機会ないですよね。でもスマホがあれば解決できるんです。過去に付き合っていた人と見た映画など、懐かしい映像をみるだけでも報酬になります。昔のシナプスを呼び起こすから、若返りにつながります」 シニアになると脳は萎縮していくといわれるが、スマホがあれば、手軽にそれを遅らせることが可能だ。また萎縮していくからといって、それがすなわち認知症というわけではないと内野氏は言う。 「シナプスを動かさないのは、脳が錆びついて不活性な状態です。一般的に人間は20歳を過ぎたあたりから、シナプスの数は減っていく一方ですが、意識的に活性化すれば減少が、緩やかになるんです。脳の中のやり取りがなくなっていくことを防ぐことで加齢によって脳が萎縮していても、活性な脳のまま元気でいられるわけです。そして活性化させられるのは、新鮮な体験だけなのです」 つまり脳のサイズより活発かどうかが重要で、ニューロンネットワークを、再活性化させるのに、シニアにはスマホが最適ということだ。逆に同じコミュニティでいつもの生活を繰り返していくことが老化を招くという。いつものスーパーで普段の買い物をする毎日なども要注意だ。 「ネットだと自分の欲しいものが、安い価格でいくらでも探し出せます。その過程が、新たな脳への刺激になる。欲しいものを安く買えれば嬉しいし、もし、意図せぬまとめ買いなどで失敗してしまっても、それもまた経験として刺激になるのです」 コミュニケーションが不足しがちなシニアには、新たな人との交流も重要だ。内野氏はできればSNSよりも、LINEやFaceTimeなどのアプリを使い、顔の見えるオンラインの通話がオススメだという。 「SNSを否定はしませんが、文章だけになると感情がわかりにくく、不慣れなシニアは萎縮してしまったり、無駄に傷つく可能性も。負の感情が生まれてしまっては台無しです。Facebookのように〝顔が見える〟SNSならベターですね」 ◆各種制度の申請やオンライン診療にもデジタルスキルは有効 心配なのは最近問題となっているSNSなどを使った詐欺だが、むしろ普段から最新のデバイスに触れて、ネット知識を持っていたほうが対応力も身につき、警戒心も持てるそうだ。また、人生100年時代といわれる昨今、医療や福祉にもデジタルスキルはとても有効だという。 「日本は申請主義といって、医療福祉制度は充実していても、自分から動かないとその恩恵は受けられない。例えば高額医療制度の申請だって、医師も行政も、手取り足取り助けてはくれません。でも、自分で調べて申請さえすれば、経済的にも得だし、その過程の経験や思考が、脳の活性化へつながるのです。 今やオンライン診療が導入されて、遠隔で医師のセカンドオピニオンを気軽に得られる時代です。私の医院でも、オンライン診療で200人ものシニアの方が登録されています。月に何回か診察のために、待ち時間や移動に時間を使って同じ薬をもらうより、オンライン診療のほうが遥かにメリットがあるからです。健康や家族の将来、資産に関わることは身が入って調べるでしょう。その成功体験は自信につながるはずです」 ここまで語られたことはなにもシニアだけの話ではない。若いうちから、新規体験を重ねていくことが、脳の老化防止にも役立つという。そこで特にオススメな活用法がある。 「若年、中年の方は、スマホに慣れているから、語学アプリで他言語に挑戦するのがオススメです。語学は脳が内側の部分を使い非常に活発になります。同じようなレベルの外国人と会話することで、一生懸命伝えようと新たな神経経路が生まれるのです。また、現実ではなかなか体験できない場所に、VRで気軽に仮想旅行してみるのも、非日常感が脳を活性化するので非常に効果的です」 健康だけでなく、実は人生へのプラス効果も計り知れないスマホ。未だに使っていない方は早速はじめてみてはどうだろうか。 『退屈ボケの処方箋 脳はスマホで若返る』(内野勝行・著/辰巳出版)
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