【社説】自転車罰則強化 危険な運転なくす契機に
自転車は運転ルールを守らなければ、人を死傷させる凶器になる。安全運転の意識を高めるきっかけにしたい。 改正道交法が1日に施行され、自転車で走行中にスマートフォンなどを使う「ながら運転」や酒気帯び運転に対する罰則が強化された。 法律上、自転車は軽車両で車の一種である。車の運転手と同じように、歩行者を守る注意義務を負う。 スマホで通話したり、画面を触ったりして自転車を運転すると周囲への注意が散漫になり、非常に危険だ。 改正道交法は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金を科す。事故を起こすなど、悪質な場合は1年以下の懲役か30万円以下の罰金となる。 酒気帯び運転も罰則対象になった。呼気1リットル当たり0・15ミリグラム以上のアルコール分が検出されれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。 酒を飲んで自転車に乗れば判断能力が低下し、正常な運転はできない。歩行者や車との事故の恐れが増す。 これまでは酩酊(めいてい)状態の酒酔い運転だけが罰則の対象だった。飲酒運転すると知りながら酒類を提供した人にも懲役や罰金を科す。車の飲酒運転と同じと受け止めるべきだ。 警察庁によると、2023年の自転車関連の事故は約7万2千件で、前年より2千件以上増えた。全交通事故の2割を超える。 自転車が加害者で、歩行者が死亡か重傷になった事故は358件に上った。ながら運転が原因の事故は、14年の9件から26件に急増している。 事故の4割近くは歩道で起き、被害に遭った歩行者の過半数は65歳以上だった。高齢の歩行者への目配りを一層心がけたい。 事故を減らすため、罰則の強化はやむを得まい。 警察庁は、ながら運転や信号無視、一時不停止など113の違反行為に対し、反則金納付の通告制度を26年度までに導入する。いわゆる青切符で、16歳以上が対象になる。 電動アシスト自転車の普及もあり、幅広い年齢の人が日常生活に自転車を使う。 だが、基本的なルールを認識している人はどれだけいるだろうか。車道の左側通行が原則で、歩道を走るのは例外だ。暗くなればライトを点灯させなくてはならない。 イヤホンやヘッドホンをして周りの音が聞こえない状態で運転する人、傘を差して運転する人をよく見かける。これも違反に当たる。 昨年4月から自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務となった。1年半が経過しても定着には遠く及ばない。 自動車運転と違い、自転車は講習の機会が少ない。警察や自治体、学校、事業者が協力して啓発を強化したい。車道の自転車専用レーンの整備も必要だ。 加害者にも被害者にもならないように、最低限のルールとマナーを身に付けよう。
西日本新聞