世帯年収900万円・40代夫婦、戸建て購入から10年後“地獄のマイホーム生活”へ…誠実そうな営業マンの「家賃並みの返済額で買えますよ」を信じた末路
賃貸・持ち家にはそれぞれメリット・デメリットが。戸建ては「資産性」に注意
住宅を購入したAさん夫妻ですが、持ち家は資産としてよい選択だったのでしょうか。賃貸と持ち家にはそれぞれ、大きく分けると以下のようなメリット・デメリットがあります。 ●賃貸のメリット ・住み替えが容易 ●賃貸のデメリット ・いつまでも家賃を払い続けなくてはならない ・インフレになれば家賃が上昇する可能性がある ●持ち家のメリット ・住宅ローン完済後は自分の物(資産)になる ・(固定金利の場合は特に)毎月の支払額が固定されるためインフレヘッジになる ・入居後もリフォームなどは自由にできる ●持ち家のデメリット ・住み替えが簡単にできない ・毎月の返済額以外にも費用が必要 Aさん夫妻にとって、部屋が広く騒音の心配が少ない一戸建ては、周囲に気を遣うことも少なく快適そのものだったといいます。しかし一方で、資産性としてはどうでしょうか。自宅を担保とした将来の老後の資金調達手段として、リバースモーゲージやリースバックといった手段もありますが、主に評価されるのは土地価格です。 土地価格は一部の地域を除き、郊外型の一戸建ては将来的には供給過剰になる可能性があるといわれていますので、よほどの立地でない限り資産性として大きな期待をすることは難しいと考えられます(少子高齢化のなかで政府も空き家問題を取り上げているほど)。そうしたことからも資産性が低い場合のリスクについても考えなくてはいけません。つまり、「持ち家は一生の財産になる」という営業マンの言葉は、必ずしも正しいとはいえないわけです。 さらに、住み始めてから10年たった今、Aさん夫妻は想定外の費用に悩まされているといいます。
Aさん夫妻が想定していなかった「インフレ」や「金利上昇」などの影響
Aさん夫妻の話によると、今後お給料が大きく増えることはないとのこと。しかし、昨今のインフレで生活費が想定していた以上に上がり、変動金利で組んだ住宅ローンも今後上昇する可能性が高くなってきました(すでに一部の金融機関では変動金利の引き上げの公算が大きくなっています)。 加えて、住宅ローン減税期間中は実質的に負担感のなかった年15万円程の固定資産税も、優遇がなくなった今では負担になってきました。また、賃貸では必要なかった外壁塗装などの修繕費も必要です。さらに将来子どもが通うであろう大学の学費も、この10年で1割以上値上がりしています。 結局のところ、営業マンが言った「家賃並みの返済額で住める」ということはなかったわけです。マイホームを購入した時点で元々ゆとりがあるわけではないライフプランだったところにインフレなども重なり、Aさん夫妻は経済的に大変厳しい状況となりました。 「家を売って小さな家に買い替えるべきか。でも、小さい家ですら昔よりもずっと高くなっている。いったいどうしたらいいのか……」と途方に暮れているといいます。 住宅ローン以外にかかる関連費用として、固定資産税が年間約15万円、築後10数年程度(一般的には築後10年といわれていますが、実際には築後10数年後であることが大半です)が経過してから行う修繕関係費が約150万円。それだけで毎月に換算すると賃貸よりも約2万円ほど支払う費用が増加します。さらに住宅ローン金利が0.5%上昇すると毎月約1万円の返済増加となります。 先々を見通すと、その時点で「家賃並みの返済額」で持ち家を購入することは難しかったのです。なにより、インフレによって光熱費や食費、車、子どもの習い事など、すべての物やサービスの価格があがっています。加えて、10年以上前には普及してなかった米国テック系サービスのサブスク費用、通信費など、当時はなかった支出も相当増加しています。 当時は想定すらできなかったサブスク費用などはある程度仕方がないとしても、インフレの予測や住宅ローンの組み方、住宅購入金額、その他にかかる費用を把握し、しっかりとしたライフプランニングをすべきだったと思います。
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