Netflixシリーズ「極悪女王」に傑作の予感! なぜ“全女”に日本中が熱狂したのか?──ゆりやんレトリィバァ「ざまーみろ!って叫ぶこと自体がめっちゃ楽しかった(笑)」
名セリフ「ざまーみろ!」
カラダ作りはもちろんだが、内面的にもダンプ松本になるのは簡単ではないはずだ。どのような過程を経て、ヒールキャラが完成したのだろうか? 「ダンプさんになろうとか、怖い感じにしようとかではなく、白石和彌監督がつくり出してくれた世界観やセットなどがリアル過ぎて、ダンプさんと同じような感情が自分の中から湧き出てきたんです。劇中の松本香さんと一緒に自分もどんどんダンプさんに近づけたような気がしました」 ダンプ松本から直々に竹刀の振り方や歩き方を教えてもらったと話すゆりやん。温厚そうに見えて実は時々ブチギレたりすることもあるそうで、本人は悪役として振る舞えることを密かに楽しみにしていた。 「でも人を竹刀でど突き回したり、大声で罵倒したりは私生活でもしたことがありません。ダンプさんは『遠慮したらダメだよ、もっと怖くやらなくちゃ』って言ってくれたんですが、なかなか思うようにできなかったんです。最初は、ここを叩いて、次はこうやって、みたいに段取り通りに練習しちゃってました。それでも撮影が進むごとに暴れることがだんだん気持ちよくなってきて、ある時、試合の撮影で、客席から帰れコールを浴びたり、モノが飛んできたりした時に、『うるせーっ! 黙れーっ!』って叫んだら、自分の殻が破れたような感じがしました。そこからは自分を解放してヒールとして自由に振る舞えるようになったんです」 そして、ゆりやんは名セリフ「ざまーみろ!」を心の底から叫べるようになる。 「このひと言ほどダンプさんの心情を表している言葉はないと思うんです。『どいつもこいつも馬鹿にしやがって!』という気持ちで、お父さん、お母さん、お客さん、千種、世間など、周りのすべてに対して怒りをぶつけていたと思います。私にとっては、力の限り大きな声で、『ざまーみろ!』って叫ぶこと自体がめっちゃ楽しかった(笑)」
ゆりやんにとって初めての経験
こうして役になりきったからこそ、撮影中、心情的に苦しい時期もあった。 「今回、共演したみなさんとは、撮影が始まる前からトレーニングなどを一緒にやっていくうちに部活のように仲良くなったんです。特に長与千種さん役の唐田えりかちゃんとはめっちゃ親友になれて。でも撮影が始まって、ダンプと千種がちょっとしたすれ違いをきっかけに険悪になっていく時には、唐田さんと話し合って、いい演技をするために私生活でも話すことをやめたんです」 ダンプ松本本人からも「戦う相手とは話さないほうがいい」と助言されたこともあり、しばらく口をきくことがなくなった。 「仲が良かったのに急に目も合わせられなくなったり、『私とは喋らへんのにほかのみんなとは楽しそうに話していて腹立つ!』みたいになってきて。気づいたら当時のダンプ松本さんと長与千種さんの関係性に近い感情が芽生えていました。この時は精神的にめっちゃ苦しかったですね」 リアルな心の揺れ動きが、本番でリアルな演技を生み出すことになる。こういった感情が湧き上がること自体、ゆりやんにとって初めての経験だった。 「何百人ものお客さんに囲まれて、タイムスリップしてダンプさんたちの試合をみんなで体験したかのような不思議なことも起きました。当時いがみあっていたダンプさん、長与さんのご両人も現場に来て、『あの時のままだね』と言ってくださって。最後は私たちの試合を通して当時を思い出したのか、ハグまでされていたことに感動しました!」 実際、試合の撮影では、本作に登場する女子プロレスラーの本人たちが同窓会のように集結。さらに当時のクラッシュ・ギャルズの親衛隊がエキストラとして声援を送ったこともあって、当時のプロレス会場の熱気が見事に再現されている。 ところで、物語のクライマックスには、思いもよらない展開が待っている。 「最後は青春そのもの。あのような結末になって本当によかったと心から思いました」 稀代の極悪レスラー、ダンプ松本。日本中から嫌われた彼女の身に待ち受ける運命やいかに……?