「年240万円が経費になる」だけじゃない!「経営セーフティ共済」が中小企業・個人事業主の「資金繰り」に威力を発揮するワケ
経営セーフティ共済が「資金繰り」に及ぼすメリット
以上が、よく強調される経営セーフティ共済のメリットですが、実は、それ以外にも資金繰りにプラスとなる以下のメリットがあり、これが大きいのです。 1. 取引先の倒産による共倒れを防げる(本来の機能) 2. 資金繰りが苦しくなったら借入ができる 3. 急なビジネスチャンスにも借入ができる 4. 掛金の減額がペナルティなしでできる ◆取引先の倒産による共倒れを防げる(本来の機能) まず、取引先の倒産による共倒れを防げるという「本来の機能」です。 中小企業・個人事業主の場合、取引先が特定かつ少数の相手方に集中していることがよくあります。 もし、その限られた取引先のうち一つでも倒産してしまうと、売掛金の回収が焦げ付き、資金繰りが苦しくなり、巻き添えに倒産してしまうリスクが考えられます(連鎖倒産)。 その場合、経営セーフティ共済に加入していれば、上述したように、払い込んだ掛金の10倍まで無担保・無利子で借入をすることができます。 その代わりに掛金全額が返ってこないことになりますが、担保をとられることなく無利子で借入ができ、しかも倒産を防げることを考慮すると、ある種の「保険料」と考えれば決して不利益な数字ではありません。
◆資金繰りが苦しくなったら借入ができる 第二に、資金繰りが苦しくなったら借入ができることです。 上述のように、掛金を最低40ヵ月以上払い込んだ後であれば、解約すればいつでも掛金全額が返ってきます。 しかし、その間に資金繰りが苦しくなり、掛金の支払が困難になる可能性があります。その場合、もしも「中途解約」してしまうと、以下の通り、掛金の一部しか返ってきません。 【中途解約の場合に返ってくるお金】※ 経営セーフティ共済HP より ・1ヵ月~11ヵ月:0円 ・12ヵ月~23ヵ月:掛金総額×75% ・24ヵ月~29ヵ月:掛金総額×80% ・30ヵ月~35ヵ月:掛金総額×85% ・36ヵ月~39ヵ月:掛金総額×90% しかし、中途解約をしなくても、掛金総額の一定割合の額まで、「一時貸付金」の借入ができます。借入額は30万円以上であり、5万円単位で設定できます。 利率は2023年6月現在、年0.9%です。 一時貸付金の限度額は掛金の納付月数に応じて以下の通り定められています。 【一時貸付金の限度額】※ 経営セーフティ共済HP 参照 ・1ヵ月~11ヵ月:0円 ・12ヵ月~23ヵ月:掛金総額×71.25% ・24ヵ月~29ヵ月:掛金総額×76% ・30ヵ月~35ヵ月:掛金総額×80.75% ・36ヵ月~39ヵ月:掛金総額×85.5% ・40ヵ月以上:掛金総額×90.25% ・掛金総額が800万円:95%(760万円) ◆急なビジネスチャンスにも借入ができる 第三に、資金繰りが苦しくなった場合に限らず、急なビジネスチャンスにも「一時貸付金」の借入ができます。なぜなら、一時貸付金の借入をするのに特に理由は求められていないからです。借入限度額は前述の通りです。 急なビジネスチャンスが到来した場合、金融機関の融資を受けようとしても、審査を待たなければ受けられず、結果としてチャンスを逃してしまう可能性があります。 これに対し、経営セーフティ共済の一時貸付金は、借り入れるのに審査を経る必要がないので、ビジネスチャンスをみすみす逃すリスクを防ぐことができます。 ◆掛金を減額してもペナルティはない 第四に、掛金を減額してもペナルティがないことです。 掛金の減額は、以下のいずれかの事由があれば認められます。 【掛金の減額が認められる事由】 ・事業規模を縮小した ・事業経営の著しい悪化、病気または怪我、急な費用の支出等により掛金の払込みの継続が著しく困難である ・借入金の貸付残高と掛金総額の10倍に相当する額との合計額が8,000万円に達している こういった事情があれば、最後の手段として掛金の減額が認められます。また、減額した場合のペナルティはありません。 このように、経営セーフティ共済は、掛金が全額経費になる以外にも、資金繰りにプラスになるしくみが備わっており、多くの中小企業・個人事業主にとってメリットが大きい制度といえます。
THE GOLD ONLINE編集部