「結婚に向いてなかった」49歳自営男性が5年後に出す“答え” #令和の親 #令和の子
子を持つ男親に、親になったことによる生活・自意識・人生観の変化を、匿名で赤裸々に独白してもらうルポルタージュ連載「ぼくたち、親になる」。聞き手は、離婚男性の匿名インタビュー集『ぼくたちの離婚』(角川新書)の著者であり、自身にも2歳の子供がいる稲田豊史氏。 【画像】「離婚か、仲直りか」5年後の答えを考える夫 第10回は、個人事業主の49歳男性。地方で妻とふたりの子供と暮らしながら、マッチングアプリで複数のバツイチ子持ち女性と会う日々を送っていた。
#10後編/ぼくたち、親になる
西日本の某県に住む屋敷満さん(仮名/49歳)は、海外の工芸品を中心とした雑貨店を営む個人事業主。妻・芳恵さん(仮名/38歳)との間に、16歳と15歳の息子がいる。 結婚当初に夫婦で立てた計画は「できるだけ間隔を詰めてふたりの子供を儲け、下の子が保育園に上がったら、芳恵さんが仕事に復帰する」だった。つまり、屋敷さんのシングルインカムで家計を回す期間は、芳恵さんの産休期間を入れても3~4年ほどで済む、という見込みである。 ところが、次男が「ある慢性疾患」を持って生まれてきたため、芳恵さんのフルタイム仕事復帰は当分叶わなくなる。また、長男が、小学校の人間関係が原因で私立中学に通うこととなったため、出費が増大。屋敷さんのダブルワークと芳恵さんのパートでなんとか家計を回すが、馬車馬のように働いてすり減った屋敷さんは、芳恵さんから「搾取されている」と感じるようになった。 そこで屋敷さんは昨年末からマッチングアプリをスタート。Aさん、Bさん、Cさん、Dさんという4人の女性たちから、「心から求められているという実感」と「何かを差し出したことに対する感謝」を与えられ、生きている感覚、解放された感覚、尊敬される感覚に包まれた。どれも、芳恵さんとの結婚生活では得られなかったものだ。 そんな屋敷さんは、つい最近、ある重大な決断を下した。 ※以下、屋敷さんの語り
自分の長所は、妻には「いらない技術」だった
マッチングアプリで知り合った女性たちとしゃべっていて、それぞれの人たちから別々の言い方で言われたのは、僕が「聞き上手である」ということでした。屋敷さんは話もおもしろいし、私の話や愚痴もちゃんと聞いてくれるんですねと。 じゃあ、なぜそのスキルを妻の芳恵には発揮できなかったのか。彼女には「いらない技術」だったんですよ。 芳恵は、「私の愚痴を全部聞いてほしい、相槌を打ったり共感したりしてほしい」というタイプではありません。それを求める女性が世に多いということは聞いたことがありますが、芳恵はまったく違う。「話を聞いてる暇があったら動いて」という人。掃除機をかけろ、皿を洗え、草むしりをしろ、です。 芳恵は「聞き上手」という僕の資質になんら価値を見出していないし、僕の傾聴力なんてなんら求めてないんです。AさんやBさんやCさんと違って。 さらに芳恵は、僕が日々の仕事でヘトヘトになっている体に鞭打って掃除機をかけ、皿を洗い、草むしりをしても、何ひとつ感謝なんて表明してくれない。これまたAさんやBさんやCさんとは違って。 言ってしまえば身も蓋もないけど、芳恵じゃなかったんですよ。結婚すべき相手は。 だから僕は、AさんやBさんやCさんに走ってしまう。それはもう、仕方がない。芳恵が与えてくれないものを、彼女たちが与えてくれるので。 罪悪感や背徳感はあります。でも満足感と充実感が、それらをがっちり組み伏せているんです。