人口減少で避けられない労働力不足…国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる『2025年問題』で
富山テレビ放送
人口が100万人を割り込んだ富山県。 いま、県内で何が起きているのか…。 人口減少で避けることができない「労働力不足」を取材しました。 今年は、物流や建設、医師の3つの業種で時間外労働の上限規制が導入され、暮らしへの影響が懸念される「2024年問題」に関心が集まっていますが、次にやってくるのが、「2025年問題」です。 来年は、国民の5人に1人、2180万人が75歳以上の「後期高齢者」となり、3人に1人が65歳以上の高齢者となります。 様々な業種が影響を受けると言われるなか、介護現場も対応に迫られています。 高岡市戸出にある特別養護老人ホーム「だいご苑」。 スタッフは、グループ全体で280人ほどと県内でも大きな施設です。 この施設では、去年、採用に大きな変化がありました。 *特別養護老人ホーム「だいご苑」 野村幸伸施設長 「退職者に対して採用者はここ2~3年同じだった。必要な職員は維持できていた」 17年間、施設長を務めてきた野村さんです。 現場の待遇改善のため福利厚生の充実に努め、これまで退職者と採用者の数は均衡を保ってきました。 しかし…。 *特別養護老人ホーム「だいご苑」 野村幸伸施設長 「去年(採用が)全然追いつかなくなった。職員の定年など社会的要因も重なった年で、データ分析もしているが、代わりが見つからない」 去年、突然採用に苦労するようになったといいます。 背景のひとつに、介護業界の「賃金改善の遅れ」があるとみられます。 今年度、国は介護現場の待遇改善を図るため介護保険制度を改定し、介護報酬は、1.59%引き上げられました。 しかし、平均5%アップとなったこの春の民間企業の賃上げとは差がある状態です。 *特別養護老人ホーム「だいご苑」 野村幸伸施設長 「介護法人は社会保障制度のもとで運営される。令和4年度の収支では特別養護老人ホームは全体の6~8割が赤字」 「2025年問題」が待ち受ける来年、国内では5人に1人が75歳以上の後期高齢者となります。 高齢者が増え続ける一方、今年1月から4月の介護事業倒産件数はコロナ禍を上回りました。 この施設では、あらゆる手段を尽くして人材確保にあたっていました。 職員紹介制度もそのひとつ。 金額は、紹介した人に最大で30万円。 採用された人にも就職支度金が支給されますが、まだ採用には結び付いていません。 これまで積極的ではなかった外国人も受け入れ始めました。 現在、インドネシア人の技能実習生3人が働いています。 Q.仕事は? *インドネシアからの技能実習生 リズリーさん 「おもしろい。(利用者から)いろいろな話が聞ける。たくさん会話もできる」 Q.苦労することは? *インドネシアからの技能実習生 リズリーさん 「方言(富山弁)かな」 国は、介護分野などで優秀な外国人労働者を確保するため、技能実習制度を廃止。 キャリア形成とスキル向上を支援する「育成就労制度」を導入し、3年後に開始する予定です。 「超高齢社会」の現実にどう向き合うのか。現場の模索が続いています。 *特別養護老人ホーム「だいご苑」 野村幸伸施設長 「(介護が)必要になって初めて目を向ける人が多い。介護は必要な「インフラ」だが、そう見られないことが多い。日頃から「インフラ」として制度設計をしていく必要があると思う」 県内の介護施設では、町村部などで介護士が足りないために利用者の受入を制限している施設があるということです。 厚生労働省の調査、「労働者過不足判断」です。 数字が大きいほど人手不足の度合が高いという数値です。 先月の調査では、ドライバーの残業規制「2024年問題」もあり「運輸業」「建設業」が高くなっていますが、医療・福祉業界もそれに次ぐ高さです。 厚生労働省の予測では、来年、介護職員が32万人不足するとされています。 介護現場の苦悩は続きます。
富山テレビ放送