渡辺早織さんトルテッリーニの奥深さに驚く イタリア・ボローニャで感じた一皿の料理にかける愛
上品ながらものすごいインパクト
これぞ、ボローニャを代表する名物料理「トルテッリーニ イン ブロード」だ。 トルテッリーニが澄んだコンソメスープに浮かぶ一見シンプルな料理だが、一口食べてみると、おどろいた。 なんて奥深い味わいをしているのだろう。 トルテッリーニはあんなに小さいのに、その中に詰められた旨(うま)みの大きさは口の中ではおさまりきらないような、上品ながらものすごいインパクトをもっている。 普通のお肉とは決定的に何かが違う。知っているようで知らない味だ。 感激して中に何が入っているのか聞いてみると、ボローニャ名物のソーセージであるモルタデッラを使っているとのこと。 モルタデッラは淡いピンク色をしたしっとりと優しい唯一無二の味わいが特徴だ。 そのまま食べても止まらないおいしさのこのモルタデッラを、贅沢(ぜいたく)にトルテッリーニの中に使っているからこその上品な味。 きっとプロシュートや挽(ひ)き肉だけを使ったらこの繊細な味にはならないだろう。 トルテッリーニのおいしさの秘密は、モルタデッラにあり。 このトルテッリーニの上品さをつぶすことなく、より一層引き立てる繊細なブロードの仕事も素晴らしい。 聞いてみると牛肉や香味野菜を少なくとも4~5時間煮込んでいるそうだ。 「実はラグーのパスタも作って…よければ食べてくれる?」 と控えめに提案してくれるその友達家族のご両親に甘えて日が暮れるまでたっぷり食べて話してボローニャを満喫した。 モルタデッラを買ったら私にもトルテッリーニが作れるかな…? 帰り際、恋しくなるだろうからとふと頭をよぎったけれど、いや、ノンナの味には絶対にかなわない。 「また食べにきます」と約束してボローニャを後にした。 次はどんな料理に出会えるかな。 (文 渡辺早織 / 朝日新聞デジタル「&Travel」)
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