“史上最高年俸選手”獲得で変化? ドジャースが結ぶ長期大型契約の背景とは…
今オフ10年7億ドルで大谷翔平を獲得したロサンゼルス・ドジャース。その後も補強の手を緩めず次々と大型契約を結んだ。これまで大型契約を抑えてきたドジャースが方向転換したことは明らかだ。ドジャースが何を考えているのか、そもそも大型契約を追加できたのはなぜなのか、リスク管理は適切なのか。ここまでのドジャースの契約に着目した。
大型契約のメリット、デメリットとは?
チームにとって大型契約は、スター選手を長期間保有できるというメリットがある。2014年オフにマックス・シャーザーはワシントン・ナショナルズと7年2億1000万ドルの契約を結んだが、契約期間中シャーザーはサイヤング賞2回、オールスター6回、ワールドシリーズMVPの働きを見せた。 加えて契約最終年にドジャースにトレードされた際には、当時ドジャースのトッププロスペクトであったジョサイア・グレイとキーバート・ルイーズをナショナルズにもたらした。 一方で長期かつ高額な投資をすることはリスクでもある。2019年オフにロサンゼルス・エンゼルスはアンソニー・レンドーンと7年2億4500万ドルの契約を結んだ。契約は今年で5年目を迎えるがフル稼働したのは短縮シーズンとなった2020年のみでその後は162試合中平均で50試合程度しか出場できていない。 また、フィールド外では「野球は最優先事項ではない」と発言し、ファンと騒動を起こすなどチームにとってマイナスとなっている。チームの編成部門は財政、戦力、さらにはチームケミストリーに与える影響など様々な要素を考慮した上で、大型契約を選手に渡すのである。
“天才”フリードマン編成本部長の手腕
さて、大谷翔平獲得前のドジャースは徹底して大型契約を回避してきた。現在の編成トップであるアンドリュー・フリードマン氏が就任した2014年以降での1億ドル以上の大型契約はクレイトン・カーショーの8年2億4300万ドル、ムーキー・ベッツの12年3億6500万ドル、フレディー・フリーマンの6年1億6200万ドルと3つのみであった。 この頃のドジャースはカネでスター選手をそろえるよりもジャスティン・ターナーやマックス・マンシーなどに代表されるいわゆる「掘り出し物」の発掘、ジョック・ピーダーソンやコーリー・シーガーなどの若手のブレイク、さらには積極的なトレードなどで選手層を厚くすることでの戦力強化を行ってきた。 これはやはり資金が豊富とはいえないタンパベイ・レイズをプレーオフ球団に変えた経歴を持つフリードマン氏の手腕と言える。 しかし、大谷翔平の獲得後はスターパワーを求めるようになった。これにはやはり選手層の厚さで戦うことの限界を感じたというのがあるだろう。ドジャースは名門球団として毎年ワールドシリーズ制覇が目標となるが、2020年の世界一を最後にワールドシリーズへ進めていない。 近年のプレーオフで勝ち進んだチームはほとんどがスター選手を抱えている。2022年にフィリーズはNLCS第4戦でブライス・ハーパーが逆転ホームランを打ったことでワールドシリーズ進出を決めた。 記憶に新しい2023年ワールドシリーズ第1戦ではコーリー・シーガーが同点に追いつくホームランを放った。ドジャースがプレーオフを勝ち進むためには一振りで試合を決められる打者やピンチで相手を制圧する投手が必要だと判断したのだろう。