「人食いバクテリア」広島でも患者増加 ことしはすでに9人、昨年1年間の半数超え
発症者の3割以上が亡くなる年もある劇症型溶血性レンサ球菌感染症が広島県でも拡大している。ことしも2カ月足らずで、昨年1年間の半数を超す9人の患者が報告された。専門家は「急激に悪化する全身の痛みや手足の腫れ、意識の混濁があれば、すぐ医療機関の受診を」と呼びかける。 【グラフ】広島県内の劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者数の推移 全国で報告された昨年の患者は941人(速報値)で、1999年以降で過去最多となった。広島県も3番目に多い16人で、ことしも報告が目立つ。手や足の壊死(えし)を起こすこともあるため「人食いバクテリア」とも呼ばれる。 溶血性レンサ球菌はありふれた細菌で、健康な人の皮膚や喉にいることもある。中でも「A群」は子どもの咽頭炎の原因として知られ、広島県では関連の咽頭炎の警報が続いている。ただ、通常は感染しても軽い風邪症状で済む。 一方、ごくまれに起きる劇症型は手足の痛みや発熱などから始まり、急激に進行して多臓器不全になり、集中的な治療が必要となることが多い。壊死した部分を削り取る治療をすることもある。高齢者が中心だが、若い人の発症もある。 広島大病院(広島市南区)感染症科の大森慶太郎医師は「劇症型になる仕組みはよく分かっていないが、切り傷や打撲があるときや、糖尿病などの基礎疾患がある人の発症が目立つ」と指摘。細菌の入ってくる傷口はシャワーとせっけんで洗って清潔に保つよう促す。
中国新聞社