【谷繁元信】構え良く捕り損ねゼロ ヤクルト高卒ルーキー捕手鈴木叶は十分に合格点、将来楽しみ
<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク3-9ヤクルト>◇12日◇みずほペイペイドーム 【写真】左前に決勝打を放つルーキー鈴木叶 ヤクルトはルーキーの鈴木叶捕手に注目した。 いいキャッチャーが入ったと聞いてはいたが、実際のプレーを見るのは初めてだった。結論から言うと、十分に合格点。将来が非常に楽しみだ。 まずキャッチングだが、そつなくやれていた。構えが良く、捕り損ねはゼロ。多少タイミングがずれる場面はあったが、数多く受けていけば問題ないレベルだ。私の1年目より全然いい。ランナーを出したら、動きを視界に入れていた。2回1死一塁で柳町への3球目がワンバウンドになると、体で止めた後、すぐに一塁走者を確認していた。サインを出す形もいい。迷うことなく、ピッチャーに語りかけるようだった。山野とはファームで組んでいたこともあるのだろうが、見ていて不安にさせられない。この日はスローイングは見られなかったが、キャッチャーの基本はできている。 バッティングにも目を見張った。3回のプロ初打席は初球から振った。追い込まれてからのチェンジアップにもついていき、ファウル。最後はスライダーに空振りしたが、変化球に対応した中での三振。だから、4回2死満塁では打つ予感がした。そのとおり、左前に決勝打。7回の左前打は真っすぐを捉えた。内寄りの球で詰まってくる分、左肘を抜きながら振り切った。技術も備えている。 私と同じように高校からプロに入り、1年目で1軍デビューした。だが、私の場合はまずは代打で、途中出場を経て、11試合目でスタメンマスクをかぶった。鈴木は初出場でスタメンマスク。それで、強打のソフトバンク打線を8回1失点にまとめたのだから、大したものだ。この日受けた108球は、忘れることのない108球になるだろう。 正直なことを言うと、最初は何か気になる点はないか? という目で試合を見始めた。強いて挙げれば、1点だけ。バッターが打った瞬間、目をつぶる場面が何度か見られた。体の自然な反応なのだが、目をつぶってしまうと打球を見失い、キャッチャーフライに反応が遅れる恐れもある。私もプロに入ってから意識した。インパクトの瞬間に目を開く訓練を続け、つぶらないようになっていった。 初めて組む投手も増えるし、課題も見つかるだろう。1つ1つ、乗り越えて欲しい。トレーニングや練習を重ね、ただ大きいだけではない、強さを持った体になって欲しい。長く野球をできるかは自分次第。周りに流されることなく、「捕手・鈴木」の色を出せるよう心から願っている。(日刊スポーツ評論家)