【高校野球】40年ぶり春4強の武相 練習の「姿勢」「質」を高めて遂げた躍進
「練習の賜物だと思います」
なぜ、苦節4年で激戦区・神奈川で上位進出を果たせたのか。2つの要因がある。 まずは、練習への姿勢。 グラウンドは張り詰めた空気が流れ、全力疾走、全力発声を徹底している。常日頃から公式戦を想定したキビキビとした動きをしているから、試合会場で浮足立つことはない。 「ウチは9イニング勝負。常に言い続けていることです」。横浜商高との4回戦では3点ビハインドから逆転。日大藤沢高との準々決勝も2回表に3点を先制されたが、3回裏に打者一巡で一挙5点の大逆転劇を見せている。 次に練習の質。 準々決勝でリズムを大きく変えたのは6回表の日大藤沢高の攻撃だ。無死二、三塁。三塁線の鋭い打球を三塁手・渡辺羽音(2年)がダイビングで好捕、飛び出していた三塁走者を封殺した。次打者の場面(一死一、三塁)では、八木が意表を突く巧みな一塁けん制でアウトにしている。その打者を遊ゴロ抑え、相手に傾きかけたムードを食い止めたのだ。八木は「練習をしてきたので、合わせてできた。自信を持ってできた」と胸を張った。 「大学で野球をやってきましたので、一つの流れを変える1プレーに対して、時間をかけて取り組んできました。けん制以外にも、バントシフト、バント処理……。大学、高校もそこの大事さは変わらない。これまでずっとやってきた、練習の賜物だと思います」(豊田監督) 昨秋は桐光学園高との県大会4回戦で、延長10回タイブレークで惜敗(3対4)した。 「9月17日に負けたその次の日から、今日という日を目標にあきらめずにやってきた。昨秋から出場している選手も変わらず、あの悔しさを下に成長してきました」(豊田監督) 次戦、準決勝(5月3日)で勝利すれば、40年ぶりの関東大会出場である。 「4年目でベスト8が初めて、ベスト4も初めて。僕自身、横浜スタジアムにも初めて行くので……(苦笑)。関東大会と言われても、イメージが沸きません。次の向上高校さんに向けて1週間をかけて、選手と一緒に対策して、研究していきたい。もう1回、準決勝へ向けてベストを尽くしたいと思います」 あくまでも、無欲を強調する豊田監督。愛する母校の「古豪復活」の過程に、気負いはない。準決勝まで中5日。神奈川県高校野球のメーン会場・ハマスタで、練習の成果を発揮するだけである。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール